Googleの対応に関わらず、Cookie規制への備えは必要に
セッションのモデレーターを務めたビーアイシーピー・データの渡邉氏は、テーマとなる「ポストCookie時代のマーケティング」について、冒頭で次のように語った。
「2024年7月、GoogleがサードパーティCookie規制廃止の撤回を行いました。しかし、これによってサードパーティCookie規制への対策をする必要がなくなったわけではありません。私たちはもっと根源的な問いを見つめ、考える必要があるのです」(渡邊氏)
まず、渡邉氏はポストCookieのマーケティングの現状を語る前段として、Cookieの歴史を紹介。Cookieという技術は1990年代に登場し、広告業界で取り入れられていった。大きな変化があったのは2010年代のことだ。RTB(リアルタイム入札)の仕組みが登場し、プログラマティック広告の本格化が進んでいった。
そして2024年、GoogleがサードパーティCookie規制廃止の撤回をしたニュースに注目が集まった。だが、2017年の時点でAppleはWebブラウザ「Safari」にITP(トラッキング防止機能)を導入しているなど、既にCookieの制限は始まっている。また2016年には、GDPR(EU一般データ保護規則)がEUで発効となっている。
こうした動きが世界で起こっている中、サードパーティCookieの規制に対応したマーケティングを準備し実施していくことは、Googleの今後の対応に関わらずいずれ必要になるといえる。では、このような状況で、国内の先進企業はどのように対応を進めているのだろうか。
約1億の顧客データを活用し、スピーディーに施策を実行
次に、NTTドコモの下地氏が、同社のデータ活用における現状を明らかにした。
「当社は、これまで自社データを収集し活用してきました。現在は約1億の『dアカウント』に紐づいた顧客データを保有しています。その情報は多種多様で、お客様の購入データや行動データ、さらには位置情報などが挙げられます」(下地氏)
こうしたデータはユーザーごとに分析がなされ、趣味嗜好の把握などにつなげている。たとえば、メールの配信商材やサイト内での表示コンテンツの出し分けといったレコメンドに活用できる。加えて全社データから、ユーザーの将来的な動きを予測し訴求につなげるための「予兆データ」も作成している。
「NTTドコモでは、保有するデータの利活用を効率的に進める環境作りを進めてきました」と下地氏。以前はマーケターがデータを分析し活用したいと思った場合、データを入手するには他部署に依頼をする必要があったため、スピーディーな施策の実行が難しかったそうだ。現在は簡易分析ツールの導入を進めるとともに、マーケターがデータを自分で抽出できる環境も整備されているという。