WHOとWHATを定義し、適切に接触・提案する
MZ:WHOとWHATを定義するところからのすべてが、ストラテジーマップには描かれているのですね。これで、今どの段階で何をすべきなのかを把握して、適切なHOWを選んでいくことになるのでしょうか。
西口:はい。自社のプロダクトにとって何が機会で、何が課題なのか、何をすればいいのか、今から実行しようとしているHOWは、どのような顧客に、どんな意味があるのか。ストラテジーマップを常に念頭に置くことで、これらを確認することができます。順に説明しますね。

(1)価値を定義 WHOとWHAT(顧客戦略)
西口:すべての起点は、コンパスとなるWHOとWHAT、すなわちどんな価値を広げたいのかです。既存のプロダクトなら、現時点で顧客が価値を見出している便益と独自性は何で、その顧客の特徴は何か、ということです。新規のプロダクトなら、マーケターの期待や仮説から始まるでしょう。その組み合わせは、最初は一つですが、必ず複数成立していきます。ストラテジーマップでは仮に、3種のWHO&WHATで見ていきます。
(2)WHO(潜在顧客)へ接触し、WHAT(便益と独自性)を提案
西口:WHOとWHATが定義できれば、そのWHOと同様な特徴やニーズを持つ潜在顧客がどこにいるのか、その方々にはどこで接触できるのかを考えます。これが、最適なHOWの選択になりますね。様々な接触方法やメディア、訴求方法やクリエイティブ表現を通して、価値を見出していただける便益と独自性を伝え、体験していただきます。HOWを駆使して、WHOとWHATの組み合わせを実現していくのです。
初回購入から、価値が再評価されれば継続につながる
MZ:潜在顧客が便益と独自性を知って、価値を見出したら、購入につながるということですか?
西口:そうですね。それが次の段階、新規顧客の誕生であり、初回購入の成立です。

(3)新規(初回購入)
西口:潜在顧客が価値を見出した結果、初回購入が起こります。すなわち「WHOとWHAT」の組み合わせが成立します。ここでは、(2)から(3)に至るために使った、HOW(手段手法)のコスト効率が重要になります。潜在顧客の行動や居場所を特定し、効率よく接触し、魅力的にWHATを訴求できれば、最小限のコストで顧客になっていただくことができます。BtoBの場合、(2)と(3)にリード獲得やナーチャリング(購入意欲の向上)、商談などのプロセスが入ってきますが、「WHOとWHAT」の関係は同じです。
(4)価値の再評価(実際の使用体験)
西口:「顧客戦略(WHOとWHAT)」が成立し、初回購入がされた後は、顧客は価値の再評価をします。入手したプロダクトを実際に使用してみて、期待通りであれば、あるいは期待とは違うけれど便益と独自性を実感したら、継続購入につながります。
悪くはないけれど、競合品や代替品と比較すればそちらのほうがいい、となれば継続されず「離反」となります。また、ブランディングのパートで解説しましたが、「いいな」と思っても忘れてしまうことがあります。そうすると、やはり離反につながります(忘却離反)。