樹海で迷わないためのコンパスと地図
MarkeZine編集部 吉永(以下、MZ):本連載も20回目となります。ここまで様々なトピックを伺ってきました。
西口:もう、初学者が押さえておくべきマーケティングの「基本の“き”」は、一通りお話ししたと思います。マーケティングとは何のための、どんな活動なのか、それを実行するために何が大事なのか、何となくイメージできたでしょうか?
MZ:そうですね、だいぶ視野が広がり納得感を持てた実感があります。
西口:今回は、ここまでの内容をすべて網羅したものとして「ストラテジーマップ(戦略地図)」を紹介したいと思います。少し複雑に見えるかもしれませんが、順を追って説明しますね。
西口:元々、本連載のベースとなる書籍『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)では、マーケティングの“樹海”で迷わないためのコンパスと地図を提案することを目的としていました。
MZ:コンパスと地図、ですか?
西口:はい。一般的にコンパスと地図があれば、自分の現在地を都度確認し、行くべき方向がわかります。マーケティングにおけるコンパスとは、連載の第2~5回を中心に解説した「WHOとWHATの組み合わせ」です。どんな顧客に、どんな便益と独自性を提案して、価値を見出していただくのかを明確にすれば、そのために取るべきHOW(手段手法)も自ずとわかります。
WHOとWHATの組み合わせ=「顧客戦略」
MZ:「誰に、何を提案するか」がコンパスになるんですね。
西口:図でいうと、第4回で解説した以下になります。
西口:今、マーケティング領域には様々な「◯◯◯マーケティング」という手法手段があふれ、何を選択すればいいかわからないですよね。ですが、迷う前に自社の商品やサービスにとって重要なWHOとWHATを定義すれば、それがコンパスになります。その定義をせず、あれこれとHOWを学んでも、複雑なマーケティングの「樹海」で迷うことになってしまいます。
自社のプロダクトで世の中に大きな価値を生み出すなら、そのために必要な「戦略」が、このWHOとWHATの組み合わせです。なので、WHOとWHATを「顧客戦略」と呼んでいます。
このWHOとWHATの組み合わせは、実は複数あるという話もしましたね(第12回)。たとえばファストフード店やファミレスには、学生グループも家族連れも、ビジネスパーソンのお一人様も来店します。それぞれ求めるものが違うので、便益と独自性を分けて考えることが大事です。
西口:また、いかに事業が成長していくかを解説した第14回では、プロダクト購入後の実際の使用体験=「価値の再評価」を通して、顧客がリピーターになったり、離反してしまったりという流れを説明しました。さらに前回まで解説していたブランディング(第16~19回)は、新規顧客から継続顧客、離反顧客のすべてに関わります。
顧客戦略を定義し、顧客になっていただき、継続や離反防止を促すすべてのプロセスを盛り込んだのが、先ほどの「ストラテジーマップ」です。