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第106号(2024年10月号)
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西口さん!難しいことはわかりませんが、マーケティングで一番大事なことを教えてください

【マーケティング入門第12回】STPや3C分析って、どう使えますか?


 現在、マーケティング領域では膨大な方法論や用語などの情報が氾濫し、初心者マーケターが知識や手法を学ぶ壁となっている。Strategy Partnersの西口一希氏は、初心者向け書籍『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)への反響から、「さらにかみ砕いて伝えるべきだと感じた」という。本連載では、マーケティング領域に足を踏み入れて2年目のMarkeZine編集部・吉永が、西口氏にマーケティングの基本の“き”から質問。第12回は前回の「マス思考」の話を受けて、既存の「STP」「3C分析」などの手法について、そして「WHOとWHATの組み合わせは複数ある」点を詳しく伺っていく。

STP分析や3C分析は、今でも有効?

MarkeZine編集部 吉永(以下、MZ):第11回では、顧客をひとくくりに捉える「マス思考」の誤りについて伺いました。モノやサービスがまだ不十分で、人口が増加していた昭和や平成時代は、多くのマーケットで「自分が欲しいものは他の誰かも欲しがる」という前提がありました。だから、顧客をマスとして捉える「マス思考」でよかったし、マスメディアを使った一方的な情報発信であるマスマーケティングが有効でした。でも今は違う、と。

西口:はい。モノやサービスがあふれ、かつインターネットとスマートフォンで無数のメディアを通じて個人が情報の受発信を直接行える現在においては、マーケットや顧客を漠と捉えた見方やアプローチだと、心理変化を起こすのは極めて困難です。そして、マーケットを構成する人口の増加がない中では、無駄な投資がかさみます。

 だからマス思考ではなく、誰に何を届けるのか、N1分析を通してWHOとWHATをしっかり見極める必要があります。

MZ:昔からあるマーケティングの分析手法に、STPや3C分析があると思います。これらは、人々が多様化している現在でも有効なのでしょうか? STPや3Cは、連載の第2回で解説いただいた4Pと並んで、マーケティング初心者がはじめの段階で知るフレームワークですが、私も含めて鵜呑みにしがちだなと思いまして……。

西口:確かに、STPと3C分析については一般的なマーケティングとして数多く解説されているので、それらを参考に簡単にまとめてみましょう。

【STP】
S(セグメンテーション)、T(ターゲティング)、P(ポジショニング)の3つの要素からマーケティング戦略を策定するフレームワーク。市場を細分化し、ターゲット層を抽出し、自社と競合のポジションを明確化して差別化を図る。

【3C分析】
Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの要素を分析することでビジネス環境を理解し、事業計画やマーケティング戦略立案に生かすフレームワーク。

市場や顧客を漠と捉えても、平均や合計しかわからない

西口:これらの手法は、マスマーケティングが主流だった昭和や平成時代においては、非常に効率が良かったと思います。まず市場全体を捉え、どの市場を取り込むか決めて、4つのPに分類して施策を回していけば、大雑把に一定の売り上げを上げることができました。今でも、マーケティングに取り掛かる最初の段階で、自社が置かれている状況や課題をおおまかにつかむには、STPや3Cや4Pが役立つでしょう。

 ただ、私自身はこれらのフレームワークは20年以上使っていません。少なくとも、STPや3Cや4Pだけから投資効果の高い打ち手の答えは出ませんし、出さないほうがいいと思います。なぜなら、いずれも多様な顧客ニーズと行動の“平均”や“合計”しかわからないからです。

MZ:平均や合計しかわからないというのは、つまり市場なら「漠とした市場全体」、顧客なら「漠とした顧客全体」を捉えるものだからですか?

西口:そうですね。平均や合計にあまり意味がないことは、ここまで度々取り上げてきた通りです。平均や合計から打ち手を考えようとすると、前回で解説した「マス思考(顧客をひとくくりにマスとして捉え、平均化した意見やニーズに基づいてビジネスを進めてしまう考え方)」に陥り、顧客が見えなくなってしまいます。

 もう一つ、STPや3Cから打ち手を考えないほうがいい理由を挙げると、一面的な捉え方になりがちだからです。特に課題になるのは、企業の視点で「顧客はこのような単独の層」と分析してしまうことだと思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/02 17:42 https://markezine.jp/article/detail/45751

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