マーケティングの4Pの中心には「C」がいる
西口:先ほど「4P」の言葉だけ提示しましたが、実は元々の理論にはここに「C=Consumer(消費者)」がいるんです。
MZ:4Pとは「Product・Place・Promotion・Price」のことですよね?
西口:はい。4Pは、“マーケティングの父”といわれるフィリップ・コトラー教授が1960年代に広めたフレームワークで、今でも、マーケティングの基本として教えられていると思います。
【マーケティングの4P】
・Product/プロダクト:どんな商品にするか
・Place/プレイス:どこで売るか、どう売るか
・Promotion/プロモーション:販売促進やPR、広告などをどう展開するか
・Price/プライス:価格をいくらにするか(『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』p34より改変)
西口:ただ、発案者はコトラー教授ではありません。元となる、最初に原案が発表された論文をあたると、次のような円の図となり中心に「C」が入っているのです。ここではCは消費者を指していますが、顧客という意味で捉えても差し支えないと思います。

(『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』p35より)
西口:この図は本来、「商品を買ってくださる顧客に対してすべきことを『マーケティング』というが、4つのPに分けて考えるとわかりやすい」という概念を示したものでした。そもそも、誰に向けて商売をするのか明確になっていることが前提なのです。
この前提にはコトラー教授も触れているのですが、4つのPというのがシンプルでわかりやすかったためか、フレームワークが浸透していく過程でCが抜け落ちて、いつの間にかC不在で語られているようです。
ビジネスは、顧客とプロダクトだけで成り立つ
MZ:改めて「消費者/顧客が中心」と考えると、4Pのうちプロダクト以外の3つは「HOW」なのだなとはっきりしますね。
西口:その通りです。実は、顧客(=WHO)と、プロダクト(=WHAT)さえあれば、ビジネスは成り立ちます。社長がいなくてもマーケターがいなくてもいい。
極端にいうと、路上に並べられた野菜の無人販売もビジネスですよね。誰かが「この野菜は新鮮だ、お買い得だ」と思えば、つまりプロダクトに価値を見出してお金を払えば、売り上げや利益が発生します。WHOとWHATは、ビジネスの最小単位です。

MZ:野菜に価値を見出す話を踏まえて、改めて連載の第1回で提示された西口さんのマーケティングの定義に立ち戻ると、「価値」の意味が実感できる気がします。
マーケティングとは……
顧客のニーズを洞察し、顧客が価値を見いだすプロダクトを生みだすこと。さらに、その価値を高め続けて継続的な収益を生みだし、その収益を再投資して新たな価値をつくり続けること。(『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』p46より改変)
西口:この定義は、マーケティングの一連を日本語的に正しく最小限に表現していますが、もっとシンプルにすると次のようになります。
マーケティングとは……
「顧客」に向けて「価値」を「創造」すること。(『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』p45より改変)
西口:唐突に「価値」や「価値を創造」と言われても、特にビジネス経験が浅い方には意味を掴みづらいかもしれませんが、「ビジネスの最小単位」と考えると理解いただきやすいと思います。