検索者の興味を満たす、受け皿としてのコンテンツ
Bリーグのファン層は平均年齢35歳、約半数が女性でファミリー層や子連れも多く、積極的にSNSを発信するなどアクティブな傾向がある。だからこそBリーグは当初よりデジタルを活用してきた。
全クラブがSNSアカウントを持ち、ROASが多いところに予算を配分している。Wikipediaも自分たちで編集して昔の情報を更新した。YouTubeコンテンツも充実させ、ショート動画も活用している。
「2016年の開幕から、8シーズンで9,910本のコンテンツをアップしています。既に大切なアセットです。お客様との共感ポイントを作るために、とにかく豊富に情報を載せています」(増田氏)
検索者の興味を満たしBリーグをより深掘りできるコンテンツを用意するため、選手個人ページのプロフィール充実や、選手の神プレー、リーグの中期経営計画発表会、チェアマンと選手とのトークセッションの動画など、Webページや動画など多様な視点でコンテンツ作りに取り組んでいる。
動画アップ時の再生回数は、あまり伸びないこともある。しかし、選手やチームが何らかの話題で話題になった際に検索して出てくる情報量と質が重要だ。
「検索して出てきたコンテンツが乏しいと、そこで関心が薄れてしまいます」(増田氏)
リーグだけでなくクラブも様々な取り組みをしている。様々なスポーツクラブの支援を行う平地氏からはクラブ側の例が紹介された。
たとえば、あるクラブチームでは、W杯への注目からバスケのゲームを初めて観る人たちがルールの検索をすると予測。そこで「バスケ ルール」というキーワードで検索1位を取れるコンテンツを準備し、実際にW杯の前に1位を獲得。バスケに興味を持った人を自然とクラブに誘導した。さらに、UGCの役割も大きいと平地氏は語る。
「Bリーグは開幕当初からファンによる写真や動画の撮影・アップを許可しています。だからこそ、多くのファンがSNSで発信していて、盛り上がりの一つになっていると感じます」(平地氏)
放送権などの影響で撮影を禁止するスポーツも存在するが、BリーグではUGC効果を見込んでルール設定をしたと増田氏は語る。
「2016年当時、テレビでは取り上げてもらえなかったので、自分たちでの発信が必須でした。そこで来場者全員がメディアになれる施策を考えました」(増田氏)
共通IDとLINE活用で継続的なタッチポイントを作る
認知率の向上とともにファン化のためにリーグが用意したのは、統一されたプラットフォーム基盤とBリーグIDだ。全クラブが同じ基盤を使用し、全体で顧客データをきちんと取得できるようにした。
具体的には、チケット購入のためにID取得を必須にしたことで、Bリーグは全クラブのチケット購入者の居住地、来場回数、グッズ購入履歴、ファンクラブへの加入状況などが把握できる。
「分析の結果、3回来場するとファンになる傾向が高いことがわかりました。来場回数が3回を超えるとリピート回数が安定してくるのです」(増田氏)
たとえばファンクラブに加入後3回来場した人にはクーポンを出したり、2回目の来場が滞っている人に割引チケットの連絡をしたりといった施策が打てているという。
しかし、各クラブに対してフィードバックができる体制ができたのは、ここ2、3年だという。それまではデータはあっても分析や対策ができておらず、宝の持ち腐れだった。これは多くの企業でも「あるある」だろう。
Bリーグではデータアナリストを2名雇用。効果的なメルマガを打つタイミングを見定めたり、チケット価格やイベントについてのアンケートをとったりしながらPDCAを回している。 最近ではLINEヤフーとパートナーシップを組み、LINEに友達追加したサポーターに対して各クラブからチケット販売やイベントの情報をリアルタイムに投稿し、集客につなげている。
「各リーグはコストを気にせずLINEを活用できます。普段の生活の中で慣れ親しんでるLINEからの情報提供は非常に有用かつ重要な要素です」(増田氏)
その他、リーグは新規顧客の獲得のための話題作りもしている。スヌーピーやすみっコぐらし、スカイマークなどとのIPコラボにも積極的だ。「コラボ相手のファンがBリーグに興味を持ってくれ、Bリーグのファンも相手先に送れる好循環が生まれます」と増田氏は解説する。
このようにリーグ側でインフラや話題を用意し、クラブ側が「きちんと使う」努力をすることでファン増加に拍車をかけている。