W杯の盛り上がりを維持、入場者数が大きく伸長
Bリーグは現在、プロ選手登録が必要なB1、B2と、その条件がないB3の3リーグで、41都道府県に55のクラブが存在する。B1、B2合計の入場者数は約452万人、売上規模は約588億円。B3を入れると入場者数は500万人以上、売上規模は600億円を超える。
2023年8月に日本で開催されたFIBAワールドカップ2023(以下、W杯)では、男子日本代表がアジア1位を獲得。その反響の大きさは、2023年10月から始まったシーズンの入場者数が前年323万人だったところ、約452万人へ増加。140%伸長したことからもうかがえる。
より詳細にデータを追うと、満員試合数はリーグ全体で前年比117%を記録。Bリーグ会員の入場者数は405万人で、そのうち33%である135万人が新規顧客だ。この規模の新規観戦者を創出するのは非常に困難なことだと増田氏は述べる。
平地氏はビッグイベントの盛り上がりをシーズン開幕まで持続し、リーグの盛り上がりにつなげられた点の大きさを指摘。盛り上がりを継続できた理由を尋ねた。
「Bリーグは来場者やファンの方々を大事にする運営を模索し続け、リアルとデジタルのインフラを両方とも整えてきました。元々積み上げてきたデジタル戦略が花開いた感覚です」(増田氏)
リアル面ではチケット販売や席の案内、試合中の解説など初観戦でも楽しめる工夫を丁寧に行い、新規顧客が現地に足を運びやすくしてきた。デジタル面では、ビッグイベント前に大量検索に耐えうるようサーバーを補強するとともに、YouTubeのコンテンツを増やし続けた。
「デジタルチームは苦労しましたが、しっかり準備していたことで新規客の獲得とリピートにつながり、数字にも残せました」(増田氏)
ビッグイベントで山ができても認知率は下がる
W杯の波及効果として、メディア露出数について「八村塁選手のNBA進出や2019年のW杯などにより増加し続けていましたが、メディア露出はその7倍」になったと増田氏。Web訪問数も約5倍に増え、チケット販売数は約2倍になったという。
しかし、W杯以降のBリーグの全国認知率の伸びは1%にとどまった。日本代表の8~9割はBリーグ所属選手であり、選手検索をしたらBリーグのサイトに行きつくにも関わらずだ。
「一度興味をもったり試合に来たもらったりしても、継続したタッチポイントがないと認知率は下がる」と増田氏は解説する。事実、Bリーグが開始した2016年10月に64.8%だった認知率は、2017年10月には57.4%に下落した。1年間で7%の人たちが忘れてしまったのだ。
Bリーグの自主調査によるとスポーツリーグに興味を持つきっかけは「テレビで試合中継やニュースを見て」が23.6%と最も高い。10~20代はテレビを見ないといわれているが、実はそうともいえない。
テレビの影響は依然大きいが、取り上げてもらうのは至難の業だと増田氏はいう。Bリーグは3年以上かけてテレビ局の役員や企業とコミュニケーションをとり、地道なネットワーク作りに励んだ。現在も各局と情報を共有し、定期的にミーティングを続けている。話題を作ることと、取り上げてもらう努力の両輪が大切だという。