Xで話題のポストを“あるある”で終わらせないために
渡辺:本日は「マーケターがあまり突っ込まれたくないことから目を背けずに考えてみよう」というタイトルで、40分間のパネルディスカッションをお届けして参ります。司会進行を務めるMarkeZine編集部の渡辺です。
渡辺:2023年12月「今から、マーケタ―があまり突っ込まれたくないことを幾つか書いていきますかね。(原文ママ)」と宣言する意味深なポストがXのタイムラインに浮上しました。このポストにリプライをつなげる形で、数々の生々しいツッコミが投稿されたわけですが、投稿したご本人にポストの意図をうかがってもよろしいですか?
B2B Marketing Hack(以下、Hack):詳細な立場を明かすことはできないのですが、私は外資系IT企業の日本法人でBtoBマーケターとして働いています。
Hack:元々、私が運営するXアカウント(@B2BMarketingHack)では、自分に対するツッコミを壁打ち的に投稿していたんです。年末のイベントを終えて開放的な気分になっていた当時、それらのツッコミをまとめつつ一年を振り返ってみようと考えました。
渡辺:一連のツッコミには、多くのユーザーから共感が寄せられました。ただ、これをただの“あるある”で終わらせてしまうのはもったいない。ツッコミを受けてしまう原因や、ツッコミを受けないようにするための改善ポイントを考えることが、本セッションの目的です。
顧客より先に課題を提起せよ
渡辺:ツッコミの数が多かったため、HackさんのXアカウントでアンケートを募り、このセッションで取り上げてほしいツッコミ上位三つをピックアップしました。一つ目のツッコミがこちらです。
Hack:このツッコミが生じる文脈は主に二つあります。一つは、マーケターがナーチャリングを半ば諦めているケースです。顧客の検討は、顧客企業内部の環境変化をきっかけに始まります。つまり、顧客が課題を感じなければ案件は生まれません。ところが一部のマーケターは「顧客企業内部の環境変化を我々がコントロールすることはできない」「だからナーチャリングは不可能だ」という立場をとっているようなのです。
もう一つの文脈は、インサイドセールスの標準化です。最近は多くの企業がインサイドセールスの機能を自社に取り入れています。インサイドセールスチームでもナーチャリングのようなことに取り組む風土が醸成された結果、インサイドセールスチームから「マーケティングチームはナーチャリングで何をしているの?」と突っ込まれてしまうのです。
渡辺:そのような背景から、件のツッコミが発せられるんですね。そのようなツッコミを受けないために、マーケターはどう振る舞えば良いのでしょうか?
Hack:次の図が示すとおり、顧客の購買活動は極めて複雑になっています。その上で、マーケターが意識するべきプロセスは「Problem Identification」と呼ばれるプロセスです。
Hack:Problem Identificationとは、顧客自身が課題を認識したり、機会を感じたりすることを指します。「ナーチャリングなんて無理」と感じているマーケターは、Problem Identificationが発生したときに刈り取ろうとしているのです。だから、来るべきProblem Identificationの発生に備えて「先に認知を獲得しましょう」「第一想起されるようにしておきましょう」という発想に至ります。
その点、欧米では課題提起を軸としたマーケ・セールスモデルが主流になりつつあります。要は、顧客が検討のトリガーを引く前に、こちらからそのトリガーを喚起するようなマーケティング・営業活動です。
顧客が対峙すべき課題を定義・提言する役割として、ソートリーダーシップがあります。現場の営業担当者一人が「我々はこの点が御社の課題だと思っています」と言ったところで、顧客は納得しません。そこで、将来的に顧客が直面する業界/業務の変化を整理し、課題解決のヒントを提言するソートリーダーシップコンテンツが必要なのです。
今ご紹介したような欧米型のスタイルを、自社にどう取り入れるのか。その点を考えていただくと良いのではないでしょうか。