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第108号(2024年12月号)
特集「2025年・広告の出し先」

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MarkeZine Day 2024 Autumn

「マーケターがあまり突っ込まれたくないこと」から目を背けずに考えてみよう


「価値」の手前の「意味」を理解してもらおう

渡辺:高広さんはいかがですか?

高広:もう何年も前の話になりますが、マーケティング関連の洋書やサイトをいくつか読んでいた際に「nurturing」という言葉が頻繁に出てくることがあったんです。この語は一般的にBtoBマーケティングの領域で使われている言葉ですが、それらの中ではBtoB/BtoCを問わず「潜在顧客から顧客への育成プロセス」というニュアンスで出てきていました。

マーケティングエンジン 代表 高広伯彦氏
マーケティングエンジン 代表 高広伯彦氏

高広:参照する書籍によりますが、見込み顧客から推奨者へと育成するまでに5~7の段階があるとされています。つまり、5~7の段階を経て、最終的に自社のブランドや製品を推奨してくれるところまで顧客を引き上げる取り組みのことをナーチャリングと定義しているんですね。

 ところが日本のBtoB業界では「リードをいかに営業機会が得られる対象とするか」という非常に短いプロセスでの取り組みをナーチャリングと呼んでいます。これは営業のためのナーチャリングであって、顧客の育成や自社の価値提案という視点が抜け落ちているんです。ツッコミを踏まえて、ナーチャリングという言葉自体を考え直すことが大事だと思いました。

 Googleがまだ今ほど知られていない十数年前に、私はGoogle広告の営業企画チームでリーダーを務めていました。「広告商品を日本でどう売っていくか」を考える、いわゆるGTM(Go To Market)戦略から関わっていたのですが、その頃に私が意識していたことがあります。それは「顧客の前で商品の話をしない」ということです。

 商品の話をする代わりに、将来起こり得る消費者行動の変化や、それに対応可能なマーケティングを共有していました。いわゆるソートリーダーシップコンテンツですね。新しいインサイト(洞察)やアイデアに興味を持ってもらえたら、自社のビジネスや商品の必要性がわかってもらえると。

 私は「価値」の前に「意味」があると考えています。「あなたが話しているのは、こういうことなんですね」と理解してもらえなければ、その先の価値も当然わかってもらえないんですよね。だからこそ、世の中の先を読んで共有する必要があると思います。

 私自身が他社のインサイドセールスから電話をいただいたり、セミナーに参加させていただいたりする中で「我々のプロダクトがいかにして課題を解決するか」という説明を非常によく聞きます。ただ、大事なのは課題ではなくインサイト(洞察)です。膝をポンと打つような、頭の中の電球が点灯するようなインサイトを顧客に差し出して「じゃあ自分たちも一歩踏み出したほうがいいな」と思ってもらう流れをつくり出す。これが本当の意味でのナーチャリングではないでしょうか。

マーケが構築するパイプラインに期待されていること

渡辺:続いて、二つ目のツッコミです。

出典:B2B Marketing Hack
出典:B2B Marketing Hack

Hack:これは、私がメンバーに対してしたことのあるツッコミです。答えるのはほぼ不可能で、難易度が非常に高いツッコミと言えます。マーケターがマーケティングデータベースを日頃から意識できているか──この点が問われるツッコミでしょう。

 最近はツールが普及したこともあり、アカウント別や部門別で市場のカバレッジを見る動きがようやく広まってきました。ABMツールを使い「営業がテリトリーとして持っている注力セグメントに対して、どうアプローチするか」を考える姿勢です。

 パイプラインは主に営業、パートナー、そしてマーケターが構築しています。その上でマーケターに期待されていることは、営業がアプローチできていない部門や、今まで案件が発生していなかったアカウントを掘り下げることです。

 たとえば、国内で事業を展開している会社が2,000社あったとしましょう。マーケターには「そのうちの何割に対して自社はコンタクトが取れているのか」「オポチュニティのある事業/部門はどこなのか」という視点で市場を見ながら、リードを獲得することが求められているのです。

 自社のターゲット企業に対するカバー率を測る際は、マーケティング部門で保有するメールデータベースを見ます。「メールデータベースの中に、これから開拓しなければならないアカウントがあるのか」「それらをどう耕せるか」といった観点で見ると良いと思います。

バケツリレー型の欧米企業とマンツーマンの日本企業

高広:ちょっと質問しても良いですか。ツッコミでは市場に存在するペルソナのカバー率が聞かれていますが、ABMの場合はペルソナ軸ではなくアカウントベースでトラックすることになりますよね。そのあたりはどう折り合いをつけますか?

Hack:DMU(Decision Making Unit)の中には起案者、決裁者、利用者など、複数の立場が存在します。このうち起案者レベルの担当者が自社のメールデータベースに入っていれば、そのアカウントを「コンタクトがある」と見なしています。理想を言えば、マネジメント層も入っている状態がベストですが。

高広:カバレッジはアカウント単位で測るけれどもトラックはペルソナでやる、ということですね。その点を踏まえて話をします。

 欧米ではSaaS企業を中心に「アカウントデベロップメント」という職種が存在しますよね。エンタープライズセールスの場合、ある部署に何かを納入した際に、その会社の別の部署でも契約を取るような横展開が起こります。要は一つのアカウントに対して複数の契約を取る仕事が、アカウントデベロップメントの役割なんです。インサイドセールス、アカウントエグゼクティブ、アカウントマネージャー、アカウントデベロップメントなど、マーケティングプロセスごとに担当がいて、バケツリレーをするモデルが主流です。

 一方で日本企業の場合、一人の営業担当者が一人の得意先につくモデルが多いです。カバレッジ視点のマーケティング戦略とは違う話ですが、それを実施するための体制や人員を考える際は、日本と欧米における営業モデルの違いを理解しておくべきだと思います。

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受注への貢献を測ることはキャリアの面でも◎

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/01/17 11:59 https://markezine.jp/article/detail/47021

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