物量で解決する深津流の「プロンプト・クリエイティブ」
深津:あるいは、AIにど真ん中の企画を100個作らせてから「この100個と被らない企画を考えて」と指示を出す方法も効果的です。徐々に問いの位置を変えていくことで、独自性のあるアイデアが出る可能性も上がります。
藤平:深津さんのAIの使い方は、いつもクリエイティブですよね。“物量”で解決する感じもあります。
深津:AIは膨大な量のデータから計算するので、精度の高いアイデアを得るには、たくさんのアイデアを生成して、その中から良いものを選ぶほうがいいんですよ。ある程度プログラムが組める人なら、AIに数十万件のアイデアを生成させて、その中から良いものをトーナメント方式で選び出すことも可能です。これができたら、それなりに納得できるものが出てくると思います。費用がかかるので、僕もまだ実践していませんが。
白武:いま、僕がAIを使う時に気になっているのは、「どうすれば自分が欲しい答えに近いものを引き出せるか」ということです。たとえば、AIを使って罰ゲームを考える場合、現実的にできるか、時代と合わないものになっていないか、自分がどんな罰ゲームを面白いと感じるのかも、AIに伝える必要がありますよね。
藤平:確かにそうですね。プロンプト・エンジニアリングとまではいかずとも、正確に指示をしないとアウトプットがズレてしまうケースは多くあります。深津さん、こういう場合は、「罰ゲームを100個考えてください。僕はこういうものを面白いと思います」といったプロンプトを入れて指針を示すのがいいんですか?
深津:僕なら、それよりもさらに手前に、アイデアを評価する基準を設けます。たとえば……そうですね、白武さんが思う「最もありふれた罰ゲーム」って何でしょう?
白武:「ケツバット」ですかね。
深津:では、ケツバットのアイデアは0点とします。次に、珍しい罰ゲームも何か一つ挙げてもらえますか?
白武:では、私が考えたものではないですが、「スチーム機の中にお酢を入れた『酢チーム』を顔に当てて、むせてしまう罰ゲーム」でお願いします。
会場:(笑)
深津:では、そんなはっちゃけたアイデアを10点と仮定します。そうしたら、0点から10点までのアイデアを段階的に、それぞれ1~5個ほど出してもらいます。進んだところで、「すみませんが、実は20点満点でした。11点以上の罰ゲームを考えてください」と問いを立てるんです。
藤平:段階的にアイデアの攻めている度合いを上げて、その後上限を引き上げるということですね。詰め将棋みたいなえげつない指示(笑)。
深津:でも、こういうやり方をすれば、10点を超える独創的なアイデアを出す可能性が高まりますよ。
白武:もし出てきたアイデアが面白くなかったり、好みに合わなかった場合はどうしていますか? 「バットを使わない罰ゲームをお願いします」と伝えるんですかね。

深津:たしかに「バットを使わない罰ゲームを考えてください」と条件を追加するのも手です。ただ、好みに合わない時は、「自分の好みを10個入れて、11個目を当てさせる」ような形でAIに仕掛けるほうが、より精度は高くなるでしょう。
白武:アイデア評価の基準となる0から10までの罰ゲームを本当に段階的に面白くなっていくように打ち込めるかどうか。自分の感覚を反映させたプロンプトをどれだけ出せるかが、鍵になりそうですね。そこが自分の腕が試される重要な部分だと思います。
