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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

“マツキヨPBの立役者”乙幡氏が紐解く 商品ブランド設計術

「激落ちくん」はなぜ価値を落とさずに製品展開を拡張できたのか?レックのブランド戦略から秘訣を学ぶ

年間で1,000点以上もの新製品を開発するワケ

乙幡:しかし、後発であった激落ちくんがなぜこれほどまでのロングセラー製品になったのでしょうか? 展開されたブランディングやマーケティング戦略について教えてください。

西田:レックならではのマーケティング戦略を採用してきたことが、成功の要因だったと考えています。まず当社では、自社製品の品質に自信とこだわりを強く持っています。実際、激落ちくんもその使用実感に対して多くのお客様から高評価をいただいているブランドです。

 どんな製品も品質が良くない限り評価もリピートもされないため、この機能的価値の高さは当ブランドが成長していく上で非常に重要なポイントですね。

レック株式会社 執行役員 経営戦略本部 本部長 兼 サプライチェーン本部 副本部長 西田 陽輔氏

西田:またメラミンスポンジの激落ちくんを購入された方が当製品のファンになり、その後激落ちくんの他のシリーズを購入されるという動きも多く確認されています。これは良質な製品の提供が、顧客からブランドへの信頼感および、キャラクターへの愛着の醸成に結び付いた結果だと考えています。

 加えて、当社では先述の通りに「おもしろいからまずやってみよう」という考え方が企業文化として根付いています。激落ちくんも、こうした「遊び心」から生まれた製品と言えるでしょう。「こんなことしたらブランドエクイティが傷つくのでは?」と心配する人は当社にはいません。まずやってみることが大事という考え方があります。

 こういった考え方を大切にしているため、当社では製品開発にも注力しており2023年は年間で1,000点以上もの製品を上市しました。

乙幡:これだけ多くの製品を開発するために御社独自で行っている手法は何かありますか?

萩原:一般的に製品開発を行う際には、製品を市場に出す前に徹底的に調査を重ねて、売れる確証を得てから販売することがほとんどだと思います。

 しかし当社では、ある程度調査を行った後は、まず製品を開発して上市します。そして、実際に製品を使用したお客様や取引先企業様からの様々なご意見をいただくことで、製品を少しずつアップデートするのです。こうすることで、お客様のニーズや消費行動をしっかりと反映した製品づくりにつなげることができます。

高品質な製品の提供で顧客からの信頼を勝ち取る

乙幡:現在では、メラミンスポンジから消しゴムに至るまで、様々な製品に派生した激落ちくんですが、御社がブランド拡張を積極的に行う理由を教えてください。

西田:激落ちくんでは、時代のニーズに合わせ、幅広いカテゴリーで製品開発を行ってきました。現在では「汚れを簡単に落とせる日用品ブランド」として様々なタイプの製品を展開しています。

 マーケティングのセオリーから考えると、既存製品のカテゴリーを越えて展開することに懸念もあるでしょう。「ブランドがこれまで大切にしてきた“お客様との約束”が守れなくなってしまうのではないか」「ブランド価値の毀損(きそん)してしまうのでは」と心配されるのではないかと思います。

 ただ激落ちくんの場合は、先述の通りまずメラミンスポンジの機能的価値をしっかりとお客様に実感していただいてきたことで、製品パッケージの「顔」とネーミングに対する信頼を獲得することができてきました。

 そのため、メラミンスポンジ以外の製品を展開したとしても、お客様にとって過去に成功体験があるブランドと認識して購入してもらうことができるので、ブランド拡張がうまくいったのではないでしょうか。

乙幡:確かにある特定のカテゴリーで成功したブランドが、そのエクイティを利用して別のカテゴリーへの拡張を試みたものの失敗したという例はこれまでもいくつも見られます。激落ちくんでは、機能面でお客様から信頼を獲得していたからこそ、うまくいったんですね。

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異業種とのコラボで新規顧客のニーズに応える

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この記事の著者

乙幡 満男(オトハタ ミツオ)

株式会社ブランドテーラー代表取締役
 

 大学卒業後、メーカーにて商品開発を担当。数多くのヒット商品を世に出し、特許も取得。米国クレアモント大学院大学ドラッカースクール卒業(MBA)ののち、米系コンサルティング会社で、イオンのPBのブランディングに従事。2014年マツモトキヨシに入社。同社のPB「matsu...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/12 09:00 https://markezine.jp/article/detail/47042

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