軽視されがちな「顧客への通知」、4つのパターンで値上げによる炎上を防ぐ
2つ目のポイントである「顧客への通知」は軽視されがちだが、消費者も人間なので、伝え方一つで値上げに対する捉え方は大きく変わってくる。こうした通知の方法は、主に「同情」「付加価値」「未来への期待」「感謝」と4つのパターンがある。
「同情」は、「これ以上コスト率が上がると事業存続が厳しいので、価格を上げさせてください」といったアプローチで、顧客に「仕方ない」と感じさせ、引き続き買ってもらいやすい。
「付加価値」は、機能やサービス・サポートなど「追加したことにより値上げをしました」という形で通知する方法だ。たとえばテーマパークなどでは、アトラクションを追加し入場料を上げている。
「未来への期待」は、「将来的にこういった機能やサービスを増やすことを目指しているので協力してほしい」といったアプローチだ。Evernoteが値上げの度に出してきたリリースがこのタイプで、上手な伝え方がされている。
「感謝」は名前の通り、お礼を伝えるパターンを指す。ローソンで販売されているからあげクンが良い例で、「36年間、本当にありがとうございました」と感謝を伝えつつ原材料の高騰による値上げのおわびを発表したところ、SNSなどで「がんばれ」「応援している」といったポジティブな反響が集まった。
「値上げを伝える際に訴求方法を間違えてしまうと、炎上してより顧客離れのリスクが上がる場合があるので、通知の仕方は重要です。実際に、内容量を10%減らした飲料にて、顧客への通知がうまくいかず、炎上したという事例もありました」(高橋氏)
値上げに痛みを感じない価値づくりとは?
3つ目のポイント「価値向上」は、値上げをしても顧客が価値を感じていれば購入し続けてくれるというものだ。ただこの場合、価値が顧客に知覚されていることが前提となる。
知覚価値は、美味しいや便利といった「機能的価値」、カッコイイと感じるような「情緒(感情)的価値」、エコであるといった「社会的価値」と3つに大別できる。
田中氏は、価格が高くても価値を感じて購入している商品があるという。
「唐揚げをつくる際に片栗粉を使いますが、従来の片栗粉は袋が使いづらく使いきれないことも多くありました。一方、日清さんの片栗粉『水溶きいらずのとろみ上手』は使いやすいパッケージで保存性が高く、内容量が多すぎないので使いきれる点もいいです。コストパフォーマンスとしては従来からある片栗粉と比べて3倍以上の価格となりますが、それ以上の価値を感じているので、値上げにもまったく痛みを感じませんでした」(田中氏)
田中氏が代表を務めるノウンズでは、企業や広告代理店などが必要とすると考えられる消費者データをアンケートで先回りして収集し、サブスクで提供しているが、同社では、あらゆるブランドの知覚価値も分析することも可能だ。