うどんチェーンがドーナツをつくっても売れる理由
発売開始50日で500万食を突破し、丸亀製麺史上最大級のヒットを記録した「丸亀うどーなつ」だが、その鍵は強いコンセプトと発売前の露出・UGC最大化にあったと南雲氏は述べる。
「『丸亀うどーなつ』のUSP(ユニーク・セリング・プロポジション:独自のセールスポイント)は、以下の3つです。まずは、うどんから生まれた『どーなつ』という独自性と新規性。2つ目が、うどん生まれならではの”もちもち食感”と想像を超える本格的なおいしさ。そして3つ目が、すべてのお店で手づくりしているという安心感です」
「丸亀うどーなつ」のベネフィット開発における「機能的価値」は、丸亀製麺のうどんから生まれた衝撃の”もちもち食感”であり、また「情緒的価値」は、なつかしさの中にも新鮮な驚きやワクワク感があることだと南雲氏は言う。
「丸亀うどーなつで狙ったのは、おやつやスイーツなどの市場を含む広義の『間食』市場だったため、プロモーションもそこに合わせて進めていきました。テレビCMはもちろん、PR発表会、ポップアップショップ、商業施設でのサンプリング配布など、オンライン・オフラインを同時に、様々な施策を展開していきました」
テレビCMでは「もっちもちが、とまらない」というコピーでタレントを起用したシリーズを展開。さらには、うどーなつの懐かしい雰囲気をできるだけ多くの若者に伝えるため、渋谷 道玄坂の店舗を改装。昭和の香りが濃厚に漂う異空間「丸亀うどーなつ屋」を出現させた。
発売時の初速を最大化する「丸亀プレバズ分析」
南雲氏によれば、飲食業界において”発売時の初速”の最大化に必須となるのが「プレバズ(事前の露出・話題化)」だという。
「われわれの分析によれば、初動客数とプレバズの間には強い相関関係があるとはっきりとわかっています。過去の分析結果から、初動の客数のうち実に約25%がプレバズの貢献だったことがわかりました。そして分析結果からローンチのどれぐらい前にどれくらいの量のテレビCMを流すべきなのか、ウェブ広告ではどのメディアにどのくらいの量をどう出し分けるべきかといったことも分析することで、狙いを達成できる勝率の高いモデルになるように努めています」
実際、丸亀製麺本社での新商品記者発表会を皮切りに、初速最大化のための施策を続けざまに打っていったと南雲氏は言う。
「道玄坂のポップアップ店舗には、数多くのメディアやインフルエンサー、そして熱狂的な丸亀ファンに『うどーなつ』の先行体験をしてもらいました。また、渋谷109前には『うどーなつ』のキッチンカーが出動。約6,000名もの方にサンプルを配布して、発売前に食べていただきました」
その結果『丸亀うどーなつ』の発表後、10日間の合計メディア露出数は900件を超え、UGCも約6,000件という大反響を呼び、これらの発信が発売の初動を高めることにつながった。
公演終盤、南雲氏はまとめとして次のように述べた。
「われわれが一番やらなければいけないこと。それは、自社のビジネスにとって何が大切なのかを理解することだと思います。その上で、構造優位をつくりにいく。これが最初に目指すべき地点でしょう。そもそも、レッドオーシャンに突っ込んでいくほど、利益は薄くなります。だからこそ、いかに同質化せずに独自の価値創造を探求し、勝負をかけられるのか。そこにこそ、ブルーオーシャンがあると信じてやっています」
そして「自社の勝ち筋を知り、それらをコントロールできるようにしておくこと。その実現のために感性とデータサイエンスを駆使し、マーケティングの力で未来を切り拓いていきましょう」と南雲氏はセッションを締めくくった。