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マーケティングの近未来

ネット広告業界のススメ:電通やGoogle、CA、Microsoftに共通すること

マネージャーにとって、最も重要なこと

 私は25年以上、ネット広告業界で仕事をしている。1990年代後半にサンフランシスコで就職し、その後、いくつかのIT企業/プラットフォーマーで働き、その後、デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とし、電通・博報堂などに常駐してきた。その経験から、漠然とした言い方ではあるが、私は、ネット広告業界はとても良い業界だと思っている。もちろん、完璧ではない。改善点もあるだろう。だが、業界自体が常に最先端を走り続け、その躍動感を感じることができ、国際的な多様性もあり、学び続けることができる。スピードについていくには精神的なタフさも必要だが、それを楽しめるなら、自分次第で充実して仕事に取り組むことができる、と思っている。

 「他者」のために全力を尽くす。もう15年以上前だが、仕事でGoogleのオフィスに通った時期がある。その頃、Googleでも似たような経験をした。それは、マリッサ・メイヤー(Yahoo!の元CEO、Googleの元VP)と話したときだった。

 プロダクトおよびユーザーエクスペリエンス担当のVPだったマリッサは、その当時、新しく入社したプロダクト担当社員を20人ほど連れて、毎年、ワールドツアーをしていた。海外のGoogle支社を回るのだ。その一環で、ちょうどその頃、来日していた。

 たしか、2007年だ。Google Japanのカフェでマリッサは、「May I …?」と私に言った。私は「Sure, take the seat!」と返した。彼女は、目の前に座った。マリッサと話したのは、それが最初で最後だ。

 彼女は自己紹介した。当然、私も「My name is ….」と答えた。が、その後、会話が続かない。どうしよう。微妙な沈黙のあと、私は適当に質問をした。

「ところで、Googleのマネージャーにとって、最も重要なことは何でしょうか?」

(What is the most important thing for the managers of Google ?)

 すると、彼女は、少し間を置いて、真剣に話しかけてきた。彼女は言った。

「Be Happy, Make Happy」

(まず、あなた自身が幸せであること。そして、周囲の人を幸せにすること)

 Googleの元CEO、エリック・シュミットらの著書『1兆ドルコーチ』(ダイヤモンド社)に、マネージャーの最優先課題が書いてある。

「すぐれたコーチは選手をどうやってよくするかを、夜も眠らずに考える。選手がもっと力を出せるような環境をつくることに喜びを感じる。<中略>ふつうの人は、他人をよくする方法を考えるのに時間をかけたりしない。だが、コーチはそれをやる。<中略>ビルの答えはいつも同じ、部下のしあわせと成功だった。あらゆるマネージャーの最優先課題は、部下のしあわせと成功だ。」

出典:『1兆ドルコーチ』エリック・シュミット 著、ジョナサン・ローゼンバーグ 著、アラン・イーグル 著、櫻井 祐子 翻訳、ダイヤモンド社、2019年11月

 『1兆ドルコーチ』はビル・キャンベルについて書いた本だ。ビル・キャンベルは、スティーブ・ジョブズ、エリック・シュミット、ラリー・ペイジなどのコーチだった。シリコン・バレーで「師匠」と仰がれた人だ。この本のなかには、マリッサ・メイヤーとビル・キャンベルのエピソードも出てくる。

 「マネージャーの最優先課題は、部下のしあわせと成功だ」というとき、部下とは「他者」である。他者の幸せのために全力を尽くす。そして、その成功を一緒に喜ぶ。他者の喜びを、自らの喜びとするとき、マネージャー自身も幸せを感じる。「Be Happy, Make Happy」で、マリッサが私に教えてくれたことだった。

 マリッサ・メイヤーはきっと、ビル・キャンベルの成功の教えを、私にも伝授しようとした。Googleの初期の幹部は、部下(他者)の幸せを目的に仕事をしていた。だから、急成長したのだと思う。

 その後、2019年、電通の山本敏博社長(当時)に、この『1兆ドルコーチ』を手渡した。『1兆ドルコーチ』を渡したのは、電通にも、他者の幸せを目的に生きる人がいる。その姿勢は共通している、と感じるからだ。

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この記事の著者

ヴァイオレット・エヴァーインディゴ(ヴァイオレット・エヴァーインディゴ)

1990年代に米国西海岸に留学し、シリコンバレーで就職。1998年のGoogle誕生に衝撃を受け、ネット広告・デジタルマーケティング領域に職域を転換。2000年代初めに帰国。米国大手IT企業・プラットフォーマーを6社経験。デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/10 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47139

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