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マーケティングの近未来

ネット広告業界のススメ:電通やGoogle、CA、Microsoftに共通すること

 米国大手IT企業・プラットフォーマーを数社にわたり経験してきた著者によるコラム。電通やGoogle、サイバーエージェント、Microsoftに共通することとは?

広告業界で働くということ

「私の娘が電通を希望しているのですが、どう思われますか?」

 それは、日本の大手電機メーカーの部長クラスの方と食事をした、7年前のことだった。その方のご令嬢は就職活動中で広告業界志望だという。電通が第一志望とのことだった。当時の私は電通に常駐し、毎日のように電通の汐留本社に通っていた。高橋まつりさんの不幸な事件などがあり、電通をはじめ広告業界の労働環境が問題視されていた時期で、父親として心配するのは理解できる状況だった。

 私は、ちょっと躊躇した。「どんな返答をしようか」と一瞬、空気が固まった。そして、少し間をおいて私は、ゆっくりと話し始めた。「本当に広告やマーケティングが好きな人にとっては、電通はとても良い会社だと思います」と正直に伝えた。

 たしかに、長時間労働は(当時は)常態化していたし、男性優位な環境なのも事実だと思う(男性優位については日本社会全体の課題といえる)。だが、広告やマーケティングの仕事が好きであれば、活躍できるチャンスは豊富にあるし、学ぶこともたくさんある。そして、魅力的な人材も多く、仕事の自由度も高い。本当に私は、電通は良い会社だと思っている。私は、博報堂DYメディアパートナーズに常駐していたこともあるのだが、博報堂グループも同様だ。会社の文化や社風は少し異なるが、電通・博報堂ともに、会社として、素晴らしい。

 もちろん、パワハラなどがあってはならないし、そのようなことがまったくないと、私の立場からは言えない。悪いところがあって反省すべきこともあって、今後もまだまだ改善していくべきことは数多くあると思っている。だが、男性であっても女性であっても、本当に広告やマーケティングが好きなら、その人にとっての電通・博報堂は、素晴らしい職場になり得ると思っている。

電通の印象

 私はおそらく、かなり偏った見解をもっている人間だと思う。私にとっての電通は、学生の頃から「スゴイ会社」であって、その印象は社会人になった後も大きく変わっていない。私にとっての「はじめての電通」は、こんな質問からはじまった。

「世界で、いちばんクリエイティブな仕事は、なんだと思う?」

 それは、学生時代にOB訪問的な感覚で電通の方にお会いした時だった。予想外の問いかけに、私の脳は、否応なく、回転する。だが、ただ回り続けるだけ、答えらしいものは出てこない。

 「正直いって、わかりません」と、私は答えた。

 彼は言った。「世界で、いちばんクリエイティブな仕事。それはね、宇宙を創ることだよ」と。

 「ちょっと、ヤバい人かもしれない」と密かに思った。私は、一瞬、距離をおいた。だが、彼は熱く静かに語り出した。それは、圧倒的だった。

 「宇宙を創った人がいるとして、それは神かもしれない。だが、その人は、なにも見返りを求めない。わかるか? たとえば、太陽はただひたすらに燦々と光を照らす。相手が善人でも悪人でも独裁者でも奴隷でも関係ない。なんの見返りもないのに、すべてを与えてくれる。」

 自分のために働くのではない。他者のために全力を尽くす。仮に見返りがなかったとしても、他人のために、できることを見つけて、最善を尽くす。「創造する」とは、そういうこと。それが、最もクリエイティブな仕事になる。その心構えがある限り、どんなことでも、クリエイティブな「仕事」になり得る。そういう話だった。

 その語り口に偽善はなかった。彼の静かな熱意は、今まさに、目の前にいる私(他者)に向かって、全力を尽くしていた。私は思った。「電通、そこには偉大な人がいる」と。

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この記事の著者

ヴァイオレット・エヴァーインディゴ(ヴァイオレット・エヴァーインディゴ)

1990年代に米国西海岸に留学し、シリコンバレーで就職。1998年のGoogle誕生に衝撃を受け、ネット広告・デジタルマーケティング領域に職域を転換。2000年代初めに帰国。米国大手IT企業・プラットフォーマーを6社経験。デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/10 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47139

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