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生活者の心理はどう変化している?消費者行動&調査手法の最新動向(AD)

止まらぬニーズ多様化、調査の鍵は四つの“みる”?ニッセイ基礎研究所が語る、消費者理解を深めるヒント

調査の肝は「目的」をしっかり定めること

MZ:企業がマーケティング活動を行う上でこれらの傾向と消費者イメージを知っているだけでも打ち手が見つかりやすくなりますね。とはいえ、消費者像やニーズを正確に把握することは容易ではありません。普段、小口様が調査を行う際に意識しているポイントがあれば教えてください。

小口:調査にとって特に重要なことは目的をしっかりと設定することと、そのための仮説の立案だと考えています。調査を目的があいまいなまま実施してそこから見えてきたものを探るというより、目的に照らして事前に知りたいことの仮説を立て、その仮説の立証に向けて調査を実施するようなイメージです。

 消費者ニーズを捉えるための調査として理想的な流れは、比喩としては少し話が飛んでしまうかもしれませんが、「弓を引き、的を射抜く」という弓道のイメージに近いように思います。何のための調査か、射るべき的(まと)=目的を確認することや、そのための射法(仮説)を自分に問いかける。そして視座と視点を決める、すなわち「構えをとる」ことは調査においても重要だと感じます。さらに、矢を放った後で、「その結果を見る→結果から仮説を評価する→その評価に基づき目的に対して結論を出す」という一連の流れも同様です。

 このように、初動で「調査の目的」がしっかりと定まっていないと結論がぼやけたものになりがちで、あまり良い調査にならない可能性があります。一般的な調査、特にマーケティング・リサーチの実施目的を四つの象限にわけて考えてみたのが図5です。

【クリックすると拡大します】
図5.調査目的の四つの象限。計画段階・実行段階における「知る」と「決める」

小口:調査の目的が「現状やその要因を知るため」なのか、それとも「計画を決定するため」なのか。または、施策の実行段階で「よりリスクが少なく成功確率の高い実行策を選定したい」のか、施策実行後の「結果や効果を検証したい」のか。

 この図は一般論ではありますが、調査を行う際に「何を目的として、この調査を実施しようとしているのか」。それを明確にしなければ、結論もあいまいとなりあまり良い調査にはならないでしょう。

調査で意識すべき四つの“みる”とは?

小口:加えて、もう一つ大切なことがあります。それは、「消費者の何を、どのようにみるのか」を事前に決めておくことです。この「みる」という行為にも、一般的なマーケティング・リサーチのプロセスにおいては「見る・観る・視る・診る」という四つがあると考えています。

【クリックすると拡大します】
図6.調査で意識すべき四つの“みる”

 それぞれ簡単に説明しますと、左上の象限の「見る」は、マーケットの統計や売上データを用いて俯瞰的に「鳥の目」で市場やマーケットを眺めるイメージです。一方、左下の象限の「観る」では、よりミクロな「虫の目」で、現場や店頭などで起きている市場の実態を観察します。

 そして、右下の象限の「視る」は、一人ひとりの消費者に対して、インタビューやヒアリングなどを通して細かい行動やその時の動機を探っていくイメージです。そして最後に、右上の象限の「診る」では、消費者調査などを通じて得られたターゲットや特定の消費者像についての仮説を、より定量的かつ俯瞰的に、診断・検証していきます。このように、「消費者の何をどのように“みる”か」に応じて、そのために用いる調査手法やデータも変わってくることもあります。そのため消費者のインサイトを正しく捉えるには、調査の目的に照らしてどの“みる”が今の自分にとって適切なのか、あらかじめ整理しておくことが大切であるように思います

 とはいえ、調査にはコストがかかるのも事実です。特に左下の象限の「観る」に当たる「消費者の行動観察」などは、お金も時間もかかる傾向にあります。そういった面でハードルを感じる場合は、外部ツールを活用したSNS分析などを通して、消費者の声を拾い集めて、とりあえず「観てみる」ことも大切なアクションではないでしょうか。

MZ:最後に、読者の皆様に対して調査を行う際のアドバイスをお願いします。

小口:調査を行う際に気をつけなければいけない落とし穴はいくつもありますが、特に注意したいミスが二つあると思っています。一つは、「調査の結果は得られたものの、仮説の実証にはデータが不足していて、結論が出せずにあいまいなままになるケース」、そしてもう一つは得られた結果を評価する際に「自分にとって都合良く結果を解釈してしまうケース」です。

 これらのミスは、何となく調査を行っているだけだと多かれ少なかれ起こってしまうことです。後者は一般的には「確証バイアス」というマーケティング調査の実施時には陥りがちな心理傾向なので、自覚的に注意するしかありません。一方で前者は、先に申し上げたように、事前に調査の目的を固めてそのための仮説を適切に考えていくことで、ある程度は防げると考えています。

 いずれにせよ、調査を通じて消費者の行動や心理を丁寧に捉えることは、多様化する消費者のニーズを正しく把握する近道になります。今後も消費者のニーズの多様化は進んでいくと思われますので、企業にとって調査の重要性はますます高まっていくのではないでしょうか。

 加えて、消費者の購買チャネルや商品・サービスの利用シーンも多様化する中で、企業には消費者にとってより負担が少なく、心地良いユーザー体験を提供することも求められていると言えます。消費者のニーズを調査で適切に理解して、商品開発やマーケティング活動を展開することで、今後の消費がより一層後押しされていくことを期待します。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:Meltwater Japan株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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2025/03/28 10:00 https://markezine.jp/article/detail/47301

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