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ためになるAIのお話。

AIも人間もますます賢くなった先に、楽しい広告はあるだろうか(ワンスカイ福里真一×博報堂 藤平達之)

福里流の企画術「普通の人間である自分の普通を捉える」

藤平:今日はせっかくなので、福里さんの企画への向き合い方について、もう少し聞かせてください。先ほど「企画を考える時間を大事にしている」というお話がありましたが、普段どのように企画を考えていますか?

福里:「自分の表現したいこと」があって、それをお題である「企業・ブランド」に結び付けて企画にしていくタイプがいますよね。それをクリエイタータイプだとすると、私は違うタイプで。特に自分に表現したいことがあるわけではなく、どちらかというと「企業・ブランド」のほうから積み上げて企画をするタイプです。

 その時、最初に考えるのは、その商品や企業が生まれてきた理由です。どんなブランドも、なんらか人間の人生と関わるために生まれてきたわけですから。どういう風に人と関わりたいのかを考え、その関係性を描くことによって、企業・ブランドが存在する理由が浮き彫りになる――基本はそんな感じで企画をします。

藤平:そうとは言われませんでしたが、超パーパス発想ですね。そして、このなぜ(Why)を考える/規定するというところは、AIが苦手だと言われている領域でもあります(参考の過去記事)。

 ちなみに、そのプロセスの中で、ユーザーインタビューをするなど、生活者の視点は入りますか?

福里:それがまったくないんですよ。

藤平:そこがすごいですよね。企画フェーズでAIを組み込むなら、「大量の生活者データを学習させたAIにインサイト分析をしてもらう」というのがよくおススメされるアプローチなんですが。ひたすら企業・ブランドの存在意義から積み上げていくというのは、AIで再現するのが非常に難しそうです。インサイト以上に「シズル」や「機微」の世界だったりしますから。

福里:でも、生活者視点をあまり考えないことがダメなのかも、と最近思っていて。今、日本一のCMは、カロリーメイトの受験生応援CMと言われているじゃないですか。CD+企画をしている福部明浩さんは、ターゲットを呼んで、リアルな声を聞きまくるということをしますよね。福部メソッドの最大の特徴がそこだから。私はそういったことを全然しないのがよくないのかな、と思ったりします。

 ですが、一方で、普通の人間である自分が感じていることは、世の中の普通の人が感じていることなのでは、とも思うんです。この普通さは広告界の中での自分の持ち味だとやや思っています。

藤平:理屈はわかるのですが、ずっとブレずに、その「普通」を世の中と同期し続けられるというのはかなり稀有だと思います。福里さんがすごく染まりにくいのか、絶えず世の中に染まっているのか……不思議です。

福里:広告界って、比較的エリートが多いじゃないですか。

藤平:めちゃくちゃわかります。

福里:学生時代も、ものすごく勉強ができたり、クラスの人気者だったりするような、人としてエリートみたいな人が多くて。そういう人って、やっぱり普通の人の感覚とちょっと違うところがあるんじゃないかと。

 その点、私は特別な人だったことは一度もないし。それどころか、体育祭に入り込めなかったという話を最初にしましたが、いつも端のほうで「みんな楽しそうにやってるな」と眺めていたタイプの人だったので。でも、逆説的ですが、クラスの真ん中にいない自分こそ真ん中なんじゃないかと。そんな感じで、ここまで来てしまったんですね。

 ただ、これが正しいかはわかりませんよ。カロリーメイトにずっと負けていますから(笑)。

藤平:福里さんの普通でピュアな視点がベースにあり、そこにプロとしてのアイデアが掛け算される。そこから数々の「普通なんだけどユニークなCM」が生み出される。専門性という言葉には、「知識が突出していること」のようなイメージもありますが、AI時代は、実は、経験や視点がオリジナルであることを指すのかもしれないですね。マーケティングにせよクリエイティブにせよ、そこを深掘りしていくことに、個人的にはすごく興味があります。

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賢すぎることの危うさ

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/12 09:00 https://markezine.jp/article/detail/47321

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