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マーケター必読!論文のすすめ

ビジネス環境が悪化した時、どう立ち向かうべきか?観光業の「レジリエンス」を考える【論文紹介】

 日本マーケティング学会が刊行する『マーケティングジャーナル』の内容を噛み砕いて、第一線で活躍中のマーケターに向けて紹介する本連載。今回のテーマは「マーケティング視点から考える観光業のレジリエンス」です。ビジネスを取り巻く環境が悪化した時、どのように回復させていくべきかという「レジリエンス」の観点から、観光業のマーケティングについて考えていきます。

急回復する観光需要

 この記事は、日本マーケティング学会発行の『マーケティングジャーナル』Vol.44, No.2の巻頭言を、加筆・修正したものです。

 「レジリエンス」という言葉を、ビジネスの文脈でもよく耳にするようになりました。これは、「回復力」や「困難をしなやかに乗り越える力」といった意味で使われることが多い言葉です。ビジネスを取り巻く環境が悪化した時に、それをどのように乗り越えるか、一時的な落ち込みからどのように回復するかを考えるためのキーワードとなっています。

 観光業は、先の新型コロナウイルス感染症の影響から回復し、2024年の訪日外国人旅行者数はコロナ禍以前の水準を超えることが予想されています。人気の観光地ではオーバーツーリズム(観光公害)も指摘されるほどです。

 パンデミック中に控えていた旅行・外出を積極的に行う、いわゆるリベンジ・ツーリズムの影響もあるといわれていますが、コロナ禍を経て日本の観光地としての魅力が世界に広まり、観光業自体がより一層強固で、多くの観光客を迎えられる体制になったともいえるでしょう。

災害に弱い日本の観光業

 一般的に、観光業は自然災害や政情不安のような突発的な危機に影響されやすい産業特性があります。観光客が旅行に求めることは、リラックスであったり、娯楽であったりする場合が多いため、あえて災害や政情不安がある地域に旅行する方は少ないでしょう。

 さらに、観光は生活必需品ではないため、何か危機的な状況が起きた場合には、真っ先に消費を控える対象となります。結果として、災害が起きると観光業の需要は急減してしまうのです。地震や台風などの自然災害が多い日本の地理的な特徴を考えると、この産業特性が日本の観光業にとって避けられないものであり、災害に備えて経営的な対策を考える必要があることがわかります。

 さて、ここでレジリエンスという言葉に戻ると、ビジネスの回復力とはそもそも何を意味しているのでしょうか。単に事業の売り上げや利益が回復することを指す場合もありますが、もう一つの意味は「事業の体制やビジネスのエコシステムを再構築すること」です。

 観光の文脈でいえば、宿泊業や飲食業の客数・売り上げの回復だけでなく、災害によって破壊された社会インフラや自然環境を再整備し、観光地として再出発することも意味します。需要が回復し好調な今こそ、危機の経験を振り返り、次の危機に備える必要があるでしょう。

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観光従事者の交流は、危機時にどう作用するのか?

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この記事の著者

上原 渉(ウエハラ ワタル)

一橋大学大学院経営管理研究科准教授 博士(商学)。専門はマーケティング・マネジメント、消費者行動論。『日本企業のマーケティング力』(共著、有斐閣)や『新興国市場と日本企業』(分担執筆、同友館)などがある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47383

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