ASC成功のカギ、「小さく」検証を積み重ねることが大切
MarkeZine:ASCは「運用の効率化」という文脈で説明されることが多かったですが、潜在的な顧客層を開拓するという目的でも有用なのですね。
清田:そうですね。ニーズが限定的なためターゲティングが難しい場合だけでなく、おおよそのユーザーがターゲットになるような顧客層が幅広い商材であっても、ASCは有用だと思います。

MarkeZine:なるほど。ASCを活用する時は、どのようなポイントを意識していますか?
清田:実際の運用においては、初期段階でのCVの質がその後の成果を大きく左右すると感じています。初期のCVに基づいて最適化が進められ、それを起点にターゲットユーザーが段階的に拡張されていくためです。
このような特性を踏まえ、初期の成果が期待値に達しない場合は、新たなASCキャンペーンを立ち上げ、質の高いCVユーザーの獲得を目指して再試行します。キャンペーンの立て直しと並行して、クリエイティブのPDCAサイクルも継続的に実施するなど、獲得効率の維持・向上を図っています。
長谷川:Meta社内の分析でも、年に15回以上のキャンペーンテストを実施しているブランドの広告パフォーマンスは30%改善しているというデータがあります。このことから、新たにASCの活用を検討する際も、まずは小規模なA/Bテストから開始し、効果が確認できた領域から積極的な展開を図ることが、代理店様そしてクライアント様にとって最適な戦略であると考えます。
また、ASCによる自動最適化に不安を感じる場合は、マーケティングAPI「Bid Multiplier」を掛け合わせる選択肢もあります。「Bid Multiplier」を活用し、必要に応じて人的判断による微調整を加えるとよいでしょう。
阿部:私は、ASC活用の成功の鍵は「AIの学習量の確保」と「クリエイティブの質的・量的充実」にあると考えます。まず、AI学習の観点からは、ユーザーの行動データやインタラクションを活用して学習を行うため、インプットの量と質を適切に担保することが必要です。そのためには、CVの計測やキャンペーン設計を綿密に行うことが前提となります。
そしてパフォーマンスの向上においては、クリエイティブの役割が重要です。具体的には、多様な価値観やライフスタイルを持つユーザーを意識した幅広いバリエーションのクリエイティブを制作することが、成功への近道となります。
「Meta広告×AI」はクリエイティブ領域でも進化中
長谷川:阿部さんのお話にもありましたが、AIにより広告配信の自動最適化が進んでいく中で、クリエイティブはその重要性がますます高まっています。Meta広告においては「クリエイティブも重要なターゲティング手法の一つ」と表現できるほどです。
また、そのクリエイティブの領域でもAIのソリューション開発は進んでおり、2024年5月には「Advantage+ クリエイティブ」をリリースしました。「Advantage+ クリエイティブ」を利用いただくと、テキストの改善や画像の明るさ調整、BGMのオン・オフなど、細かなクリエイティブの最適化をAIが自動的に行います。たとえば、提供されたテキストを活用し、価格を強調した広告クリエイティブを商品のベネフィットをメインテキストとして強調するものに変更するなど、ユーザーごとに最適な表現方法をAIが判断し、調整をかけていくことなども可能です。

MarkeZine:そのようなところまで自動最適化が進んでいるのですね!
長谷川:ええ。ADK様しかり、テレビ広告の取扱いが大きい総合代理店様の中には、テレビ用に制作した横型のクリエイティブを、デジタル広告に適した縦型フォーマットへ展開することが難しいといった課題を抱えられているケースも多いと思います。そのような企業様にとって、「Advantage+クリエイティブ」の活用は有力な選択肢の一つだと思います。ただ、クリエイティブの自動最適化に慎重な姿勢を示すクライアント様もいらっしゃるので、「Advantage+ クリエイティブ」は段階的な導入を進めている状況です。
Metaは創業当初から、人と人がより身近になる世界を実現することを目指してきました。これには、一人ひとりに役立つ新たな発見や価値のある関係性を生み出すことも含まれていると私自身は捉えています。広告プラットフォームとしてもそれは一貫しており、一人ひとりのユーザーに本当に必要とされるものや情報を届けていくという考え方があります。
企業やブランド、もしくはクリエイターが適切なユーザーに適切な情報を届けるご支援をするために、ASCや「Advantage+クリエイティブ」をはじめとするAI製品には、これからも積極的な投資がなされていくのでぜひご期待ください。