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“市場弱者”の小さな会社が売れる仕組みを作るには?マーケティング戦略思考3つのルール【お薦めの書籍】

 売上が伸びないことを解決したくて、マーケティングの本を読んだけど挫折した──。そんな小規模事業者や、中小企業で働く人にお薦めしたい一冊が『小さな会社の売れる仕組み』(フォレスト出版)です。本書は、売れるための仕組みを作る「マーケティング戦略思考の基礎」を、シンプルな言葉でわかりやすく解説しています。

中小企業向けのマーケティング本は実は少ない

 日本の全企業数のうち99.7%を占めている中小企業。そこで働く人が、マーケティングの基礎を体系的に学ぼうと本を探せば、大企業を想定した事例や難しい理論の本ばかりに出会う。しかし、小さな会社向けの本を探せば、SNS集客など部分的な手法やテクニックに関するものが多く、結局挫折してしまう──。このような問題意識から執筆されたのが、書籍『小さな会社の売れる仕組み』です。

小さな会社の売れる仕組み
小さな会社の売れる仕組み』久野⾼司(著)フォレスト出版、1,980円(税込)

 本書は、資本力、ブランド力、知名度、実績などをもたない“市場の弱者”である個人事業主や中小企業が、売れるための仕組みを作る「マーケティング戦略思考の基礎」を解説しています。

 著者の久野高司氏は、これまで「みんなのマーケティング」というブログやセミナーを通じてマーケティング戦略思考を伝え、個人事業や中小企業を中心に約3,000件200業種を支援してきました。

 マーケティング戦略思考というと専門的で難しいイメージを持たれがちですが、久野氏は「マーケティング戦略思考の基礎には難しい話なんて1つも必要ない」と断言。英語の略語や専門用語、複雑なフレームワークを使わず、単純にお客様の立場に立ち返って理解してしまえば、10歳でも理解できるものだと言います。

強い競合と比べられずに選ばれるポジションを狙う

 本書では、「売れる仕組み」を以下の3つのルールに分けて考えます。ルール1から組み立て、3つの要素の整合性を取ることが重要です。

  • ルール1.「戦略設計」:お客様、目的(ニーズ)、強みを特定し、選ばれる理由を作る
  • ルール2.「商品設計」:戦略を落とし込んだ商品・サービス体験の流れを組み立てる
  • ルール3.「集客設計」:集客・情報発信を中心とした購買プロセスの設計

 また、小さい会社が売上を伸ばすために最重要視すべきポイントが、ルール1の戦略設計で「強い競合と比べられることなく、選ばれる市場の中のポジションをとること」。つまり、市場の中で自社の強みが活きるお客様を選択し、その市場でのトップになれるようリソースを集中させることです。

 また自社の戦略を定めるために、筆者独自の戦略フレームワーク「戦略5原則」が示されています。

【戦略5原則】
原則1:顧客は誰?
原則2:価値は何?
原則3:競合は誰?
原則4:強みは何?
原則5:コンセプト

 さて、ここまで聞いて、マーケティングの勉強をしたことがある方はお気づきになるかもしれませんが、売れる仕組みの理論の下地となるのは、フィリップ・コトラー氏が提唱した王道のマーケティング理論・プロセス「R(リサーチ)→S(セグメンテーション)T(ターゲティング)P(ポジショニング)→MM(マーケティング・ミックス)→I(実行)→C(管理・評価)」です。

 久野氏は難しい用語や考え方をアレンジし、マーケティングを勉強したことがない人でも腑に落ちるようにまとめています。たとえば、「STP」「LTV」といった言葉にも解説はありますが、「(覚えてなくてもいいです)」と付記するほど徹底しています。

 また、中小企業向けということでマクロ環境分析は使わず、代わりに、目の前にいるお客様を通じて実践的に仮説検証することを推奨し、そのためのアンケートの活用方法も解説しています。

ツールや理論に振り回される前に

 日本の中小企業において、マーケティングの地位は確立途上なのではないでしょうか。一部の先進的な企業を除いて、マーケティング部門は戦略立案ではなく、販促活動を担当する部署として扱われています。さらに、デジタルマーケティングの分野では、多岐にわたる販促ツールに合わせた施策が膨らみ、担当者が業務を抱え込んでいるという話もよく聞きます。

 この状況に対して、経営者がマーケティングの戦略的価値を理解し、「戦略」部分にマーケティングの考え方を取り入れることが、大きな転換点となるかもしれません。

 本書は、難しい理論や手法に振り回されることなく、実践的なマーケティング戦略の考え方を学べる点で、売上向上に課題を抱える小規模事業者や、中小企業の意思決定層にとって、一読の価値がある一冊です。特に、自社の強みを活かせる市場でのポジショニングという視点は、限られたリソースで成果を出すために必要不可欠な示唆となるでしょう。

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この記事の著者

竹上 久恵(編集部)(タケガミ ヒサエ)

早稲田大学文化構想学部を卒業後、シニア女性向けに出版・通信販売を行う事業会社に入社。雑誌とWebコンテンツの企画と編集を経験。2024年翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/19 09:00 https://markezine.jp/article/detail/47519

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