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あなたは顧客を理解できているか──西口氏が解説する、N1分析とインタビューのイロハ【お薦めの書籍】

 本記事では、一人の実在する顧客の行動や心理を掘り下げていく「N1分析」をテーマに、マーケターが理解すべき考え方や行う際のポイントを西口一希氏が解説した書籍を紹介します。なぜ、集団をとらえるのではなく一人と向き合うことが大切で、どのようにマーケティング施策に活用すればよいのでしょうか。

顧客が見出す価値をしっかり理解できているか

 今回紹介する書籍は『ビジネスの結果が変わるN1分析 実在する一人の顧客の徹底理解から新しい価値を創造する』(日本実業出版社)。P&Gやロート製薬など多くの企業で実績を残している西口一希氏が、N1分析について解説する内容となっています。

『ビジネスの結果が変わるN1分析 実在する一人の顧客の徹底理解から新しい価値を創造する』西口一希(著)日本実業出版社2,200円(税込)
ビジネスの結果が変わるN1分析 実在する一人の顧客の徹底理解から新しい価値を創造する』西口一希(著)日本実業出版社2,200円(税込)

 本書の冒頭で著者は「大企業であれ中小企業であれ、顧客が何を求めているのか、顧客が何に『価値』を感じているのかをしっかり把握している企業は、継続的に利益を上げています」と述べ、顧客の心理や行動に着目する重要性を提示。顧客がどんな人(WHO)で、プロダクトに対してどのような便益と独自性(WHAT)、すなわちそのプロダクトを選ぶ理由・他のプロダクトを選ばない理由を感じているのかを、明らかにすることが大切だと述べました。

 では、自社の顧客を深く理解するためにマーケターはどうすべきなのでしょうか?

「N1分析」で“具体的な一人の顧客”を知ろう

 先述の通り、顧客に自社のプロダクトを買い続けて、あるいは使い続けてもらうには、顧客が何に価値を見出しているのかを理解しなければなりません。マーケターが自社プロダクトの価値について考える時、つい「価値は企業が与えるもの」と思いがちです。しかし、価値とは顧客自身が見出すものであると著者は語ります。

 したがって、企業目線で押し出したいプロダクトの便益や独自性を検討するのではなく、自社のプロダクトに価値を感じている顧客の行動や意識を掘り下げることが必要となります。それを実現するのが、著者が提唱する「N1分析」です。

N1分析とは:名前のある実在する一人の顧客を徹底的に理解するための分析。その顧客が価値を見出す便益と独自性を見極め、潜在的なニーズ(インサイト)を洞察し、それを基に新たな価値を創造する。

 著者によればビジネスの成否を分けるのは、顧客をどこまで深く理解したか、すなわち「インサイトの理解度」であり、その理解を深めるのがこのN1分析です。

 そして顧客を理解する際に重要なのは、集団ではなく実在する個別の顧客の心理に迫ることです。なぜなら、「具体的に存在する一人」がマーケティングの起点になるのだと著者が強調するように、ペルソナや集団のデータを見ても、それぞれの顧客が取る行動の裏にある心理やきっかけ、ニーズを知ることはできないためです。

 N1分析では、インタビューを通して顧客一人ひとりの趣味嗜好、生活態度、価値観などを掘り下げつつ、顧客自身もわかっていない「購入行動の理由」や「ロイヤル顧客化したきっかけ」に様々な角度から迫り、分析していきます。

まずはロイヤル顧客の「買う理由やきっかけ」を探る

 実際にN1分析を行う際には、インタビューを行う対象にも注意が必要です。自社のプロダクトを購入してくれた顧客に手あたり次第、やみくもにインタビューすればよいわけではない、と著者は指摘。一度きりの購入で終わってしまった顧客に理由を聞いても次につながらないため、本書で以下のように示される通り、まずは継続して購入してくれているロイヤル顧客に話を聞いていきます。

 何度も購入する、繰り返し使っている、ずっと契約しているお客様が「なぜそうするのか?」を、はじめての出会いから現在までを徹底的にひも解き、どこに便益や独自性を見出しているのかというWHOとWHATを探る。これが「N1インタビュー」の目的です。

 さらに、顧客は「欲しいもの」「訴求してほしい形」など、企業側が欲しい答えを明確に言語化された形で持っているわけではない点も、インタビューの際に気を付けるべきだといいます。

 したがってマーケターは、インタビューを通して提供すべきプロダクトや訴求方法の答えそのものを探すのではなく、それらにつながるヒントを掴み仮説を立てて、さらに深掘りしていくのです。20人ほどのロイヤル顧客に深く話を聞いていくと、「一般顧客がロイヤル化するためのアイデアの仮説」につながりそうな手がかりが見えてくると著者は説明しました。

 本書では、第1章でN1分析が重要な理由や概要を示し、第2章で具体的なケーススタディとして4社を紹介します。そして第3章では、ケーススタディをもとにN1分析を実践するためのポイントや流れを詳しく解説。目的ごとにインタビューで意識すべき点や、顧客のインサイトを掘り下げるための手法なども紹介しています。

 「良い商品を作っているつもりなのに売れない」「N1分析をやっているけど効果が出ない」と悩むマーケターや、自社の顧客像を具体的に思い浮かべられないと感じた方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

本記事は日本実業出版社からの献本に基づいて作成しております

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/09 08:30 https://markezine.jp/article/detail/47734

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