コンテンツマーケティングとSNSで潜在層を開拓
―― CRMの取り組みについてはいかがでしょうか?
福井:私は約3年前にaskenへ入社したのですが、当時感じたことが「あすけんでの食事記録を通してダイエットなどに成功したユーザーさんの声や、管理栄養士監修のレシピ・コラムなどの豊富なコンテンツは、まだまだ活用の余地があるのではないか」ということです。そこで、コンテンツマーケティングとSNSマーケティングに注力し始めました。
コンテンツマーケティングでは、「あすけんのある生活」という連載記事を制作。あすけんユーザーさんへのインタビューを通して、サービス利用のメリットなどを紹介しています。自社サイトだけでなく外部メディアにも掲載することで、「認知拡大→新規ユーザー獲得」の流れを作ることができました。
SNSマーケティングでは、SNS運用に長けたメンバーを採用し、あすけんの栄養士キャラクターである「未来(みき)さん」を活かした投稿を行っています。SNSを中心に「あすけんの女」といった愛称で呼んでいただくなど、UGCが拡散される好循環を生み出すことに成功し、Xのフォロワー数はこの1年で約7万人から15万人まで増加しました。
―― 潜在層へのアプローチとしても、非常に効果的だったということですね。
福井:そうですね。また、書籍の出版にも力を入れています。2023年に2冊、2024年に3冊出版しており、2025年も出版が決定しています。書籍出版が新規ユーザー獲得にどれほど寄与しているかは正直、未知数です。ただ、ブランディングや信頼感の醸成には効果的ですし、本という形であすけんが家庭の中にあることで、ユーザーさんとの接点を維持することにつながると考えています。
リアルイベントで既存顧客との絆を深める
――既存ユーザーの継続利用を促すためのCRM施策について教えてください。
福井:リアルイベントは、既存ユーザーとの関係性を深め、ファンになってもらうための重要な取り組みのひとつです。運営側と直接交流することで、アプリへの信頼感や愛着が深まり、継続利用につながると考えています。2024年3月に初開催した食イベント「あすけん式 おとなの食育展」には、約1,300名のユーザーさんが参加してくださりました。
参加者数はアプリユーザー全体から見るとごく一部ですが、イベントの様子をアプリ内で報告したところ「次回は参加したい」という声が多数寄せられました。アンケート調査でも、回答者の9割が次回のイベント参加に意欲を示してくださっています。その理由として「運営側との交流」「具体的な食事指導を受けられる」「イベント出展企業のブースで情報収集ができる」などが挙げられています。
あすけんのヘビーユーザーの方は、栄養に関する知識への関心が高い方が多いです。イベントに出展いただいた企業様からは「こんなに細かく栄養素について質問されたのは初めてでした」という嬉しい声もいただきました。ユーザーさんと企業の双方にとってメリットのあるイベントを、今後も継続して開催していきたいです。
――これまで様々なコンテンツを制作・発信されていますが、KPI設定や効果測定については、どのように考えていますか?
福井: もちろん、KPIは遵守しています。新規会員獲得数やMAU、休眠会員の復帰率など、主要な指標は常にモニタリングしています。ただ、書籍の出版がどれだけ新規入会に貢献しているかがわからないように、個々の施策がどれだけ作用しているのかは測れないものもあります。重要なのは部分最適ではなく全体最適の視点です。すべての施策の相乗効果で、最終的に守るべき指標が達成できていることが一番大事なのだと考えています。