「超」分散期のデジタルマーケティング、広告主が直面する課題とは?
混沌とした第5ステージの現在、私たちのもとへご相談に来られる広告主の悩みも深刻化しています。生成AIによって複雑な変化が起こり、ハイブリッドCookie時代が到来し、媒体・プラットフォームも急増する一方、企業のマーケティング部門は人材、スキル、ノウハウのすべてが不足しがちで、課題解決に向けて何からどのように対応すべきかわからないというご相談を受ける機会が多くあります。
さらに、デジタルマーケティング領域の専門性が高い人材は企業間で取り合いになり、なおかつ、現有メンバーに最先端の知識やスキルを身に付けてもらうため自前で教育することもなかなか難しいというお話をよく伺います。
広告代理店や外部パートナーに広告運用をアウトソースするにしても、広告主側で最新の知識や経験を有していないと正当な評価や管理ができず、成果が正しく出ているのかを把握できないまま惰性で出稿を続けてしまい、非効率な広告投資から抜け出せないという構造に陥りがちです。
また、生成AIによって媒体・プラットフォームの自動化が進んだ今、人の手を介さずともAIの力である程度の結果を出せるようになったことから、広告主や広告代理店の担当者にとってファンダメンタルな広告運用スキルを習得する必要性は薄れています。
しかし、AIでは対応できないような込み入った「高度な職人技」の領域では、広告運用担当者の個々のスキルによって結果に大きく差が出てしまいます。非効率な広告投資が発生するポイントがまさにここであり、私たちが支援する広告主の6~7割から寄せられる主要な悩みです。
ハイブリッドCookie時代、デジタルマーケティング運用は「積立型」が望ましい
非効率な広告投資から脱却し、ハイブリッドCookie時代に適したデジタルマーケティング運用を実現するには、「掛捨型」から「積立型」への移行が必要です。
これまで、リターゲティング広告やキャンペーンを短期的なコンバージョン獲得のために乱発し、結果的に効果が続かない「掛捨型」の運用を行う広告主が後を絶ちませんでした。しかし、これらの焼畑農業のような手法は、サードパーティーCookie規制が進むなかで限界を迎えつつあります。
今後、広告主が目指していくべきは、効果が持続可能で中長期的な顧客獲得につながる「積立型」の運用です。具体的には、インターネット広告のみならず、テレビCMやYouTube広告、コンテンツマーケティング、SEOやCRMで得た顧客のデータを蓄積し、そのデータを広告やメール、LINE、その他のコミュニケーション施策で活用することです。
細分化された個別最適ではなく、全体戦略のなかで持続的なトラフィック獲得やブランド認知の向上、顧客ロイヤリティの強化を中長期目線で積み立てていくことが大切です。
また、「積立型」の運用へとシフトするためには、広告主が広告運用を内製化するインハウス志向のチームを構築することが不可欠です。ただし、すべてを社内で賄うのではなく、マーケティング戦略の立案や全体統括といった上流部分を社内で担いながら、実際の広告運用や施策の実行は広告代理店や外部パートナーと協力して進める、ミドルインハウスの体制づくりをお勧めします。
この「積立型」の運用を実現することで、従来、掛け捨ててしまっていた広告費を削減し、中長期的な価値を生む積み立てが可能な広告・施策に投資予算を充てることができるようになります。ハイブリッドCookie時代は、従来の速効性に頼る運用手法を見直す契機です。広告主がインハウス志向を持って、中長期的視点から最適な予算配分を行うことが、これからのデジタルマーケティングの成功に必要だと言えるでしょう。
次回の記事では、インハウス化の体制づくりに関する具体例を、起こりがちな失敗や推奨方法を交えて解説していきます。