ペルソナが多様化する今重要なのは、ターゲットの全体像の把握
簗島:マーケティングにおいて“取りたいユーザー”と“取れるユーザー”というのは違います。“取れるユーザー”を獲得しにいく場合は、購買データなどファーストパーティデータを駆使して、今買ってくれている方に近い方にアプローチします。Web広告であれば、AIによる自動最適化に任せることもできるでしょう。
一方で“取りたいユーザー”を獲得する際は、前提として自分たちの取得できている、取得しやすい情報では足りないという意識を持つことが大切だと思いますね。
小堺:最近では、ターゲットとするペルソナが複数存在することが当たり前になってきました。そのため、ペルソナを軸としたマーケティングにはフェーズが存在すると感じています。
第1フェーズはコンバージョンする可能性の高いお客様にアプローチを行うこと。これは簗島さんのおっしゃる取れるユーザーにあたると思います。続いて、第2フェーズはターゲットとするペルソナが属するセグメントに対するアプローチです。これが従来のペルソナを活用したマーケティングで、ここだけでかなり工数がかかるのも現実です。
そして今は、ペルソナのいるセグメントとは異なるが、購入の可能性があるセグメントを見つける、第3フェーズになっています。この想定していなかったセグメントを見つけるためにサードパーティデータや、周辺情報を駆使した顧客理解へのニーズが高まっているのだと思います。

簗島:小堺さんが話した3つのフェーズのうち、自社がどこに位置しているか自覚する上で重要となってくるのは、今取れているユーザーの顧客像の理解です。また、自分たちが取れる顧客像はいくつあるのかを把握し、自分たちが取りたい顧客像を明らかにすることだと感じています。
こうしたターゲットの全体像を把握するということは、顧客理解を行う上ですごく大切だと思いますね。
顧客をストーリーで理解する
小堺:私は前職まで事業会社でマーケティングをしていました。その際にこだわっていたのがお客様のストーリー性を考えるということです。
お客様は購入するまでに様々なことを考えます。その中で、自分の会社の商品に出会い購入してくれた。その理由は何か、購入に至るまでどのような経緯があったのか。ここを理解すれば顧客解像度を高めることができますが、ファーストパーティデータだけでは購入者のデモグラフィック情報や購入した商品情報しかわかりません。
そのため当時はファーストパーティデータだけでなく、サードパーティデータを用いていました。今であれば使える情報も多いので、SNSデータや個人の金融情報(クレジットカードの決済情報や世帯年収など)を活用してもいいかもしれません。
前職の頃は最終的に、ユーザーのストーリーに合わせた値決め、私はこれを「価格体感性を持った価格表示」といっていましたが、お客様の購買意識に合わせるために商品をパーソナライズしていました。
簗島:今のお話はすごく納得感があります。僕らのサードパーティデータが提供できるのはターゲティングにおける“誰に”ですが、それだけでは情報が足りない。
ファーストパーティデータと周辺情報を掛け合わせてはじめて“どうやって”までを考えることで、ユーザーに合わせたアプローチができるようになるわけですよね。
またこれができると、データドリブンのマーケティングになるのかなと感じています。そうなると同時に再現性も生まれ、事業成長につながっていくのだと思いました。
