事業成長に貢献するストーリーの導き方
小堺:データはどうしても点で捉えられがちです。しかしデータが点になってしまうと結局よくわからなくなってしまう。
大切なのは顧客ストーリーの視点を持ってデータを線として認識し、複数のデータを掛け合わせその線を太くしていくことだと思います。太い線を見つけ、増やしていければ試行錯誤もできるようになりますから、事業成長につながっていくでしょう。
簗島:現代ではデータが増えてきたことで、そのデータの線の見極めが重要になってきていると感じています。
そうした背景から、私たちはお客様によく「一番社内で勘の良い営業の方を連れてきてください」とリクエストをしています。
たとえば、保険商品のデジタルマーケティングにおいて「レビューサイトから流入しているため購入意向があるかもしれない」という仮説があったとしましょう。ただそこから先はデータだけではわからない。
一方で営業の方に、お客様の購入された決め手を伺うと「子どもが生まれた」や「身近な人が入院した」といったお客様独自の背景を知ることができます。これらを仮説に掛け合わせると、再現性のあるストーリーに変換できる可能性があるのです。
膨大なデータに営業の方の知見を掛け合わせて有効なデータを見極め、ストーリーに活かした、象徴的な事例だと思っています。
One to Oneマーケティングには限界がある
小堺:お話を伺ってデータの見極めというのはとても大切だと感じました。
昨今One to Oneのマーケティングが流行っていますが、個人的にはやり方によってはそれは売上を下げてしまう可能性もあると思っています。費用と利益の釣り合いが取れる適切な大きさにユーザー群をセグメントし、アプローチすることが重要だと思っています。
簗島:確かにOne to Oneのマーケティングは想像以上に工数がかかり、利益に対して工数も合わないケースが多いです。実際はOne to Few、つまりある程度の群でお客様を理解するのが理想なのでは、と考えています。
その粒度は企業に異なるので、その調整のために私たちがいるわけです。
一方でそこからどこが売上につながり、どこが事業成長に響くのかを考えるのはマーケターの役目となります。そのためマーケター自身も私たちがお手伝いしている部分を理解しておくことは重要でしょう。

またファーストパーティデータとサードパーティデータ、そして周辺情報を掛け合わせて顧客理解をされている企業はまだ少ないと感じています。ただこれも理解したものを自社に有用なレベルまで粒度を荒くする必要がある。
これからマーケターが事業成長に貢献するためには、パーソナライズをどこまでするかバランスを見る能力が求められてくるのかもしれませんね。
小堺:3つのデータを掛け合わせて顧客理解を行うことは難易度が高いですが、それができると投資対効果ですべてを判断できるようになります。
そうすると成功要因がわかり事業再現力も出てくると思いますし、ブレインパッドもその支援ができるよう努めています。
そこまでいくとマーケティングの知識だけでなく、財務の知識も必要となってくるので、マーケティングが次のレベルになると思います。
