パーティーの終焉?若者に見る社交性の減衰
スポーツの大会、音楽フェスティバル、地域のお祭りや、ハロウィンやカウントダウン。イベントごとは人を楽しませる力がありますよね。その集客力や熱狂は、ブランドにとっても(協賛や出展を通し)生活者との関係性を深めるための貴重な機会です。歴史を紐解いても、古代ギリシャの収穫祭、ネイティブアメリカンの通過儀式、19世紀イギリスの晩餐会。どの時代/地域/文化でも、パーティーは特別な日のお祝いとして、人々の仲間意識や帰属意識を高めるための社交場としての役割を担ってきました。
このようにパーティーは人々の文化に深く根付いており、調査によると現代でも生活者の多くが 「必要不可欠なもの 」と捉えていることがわかります。特にプロシューマー層(トレンドを生み出し、社会の消費行動に影響を与える生活者グループ)においてその傾向は顕著です。
現代の生活者にとっても、パーティーは友人同士の交流や、新しい出会いといった、社交の場として楽しまれていることがわかります。また同時にパーティーは気分転換や、現実逃避、癒やしのような役割を果たしているようです。
一方、別の視点から見ると、近年ではパーティー文化が消えつつあることも指摘されています。現にイギリスでは、年々ナイトクラブの市場規模が縮小し続け「2030年には産業自体が消滅する」と業界団体が警告を鳴らしています(DAZED誌の記事より)。
調査からも、約半数のGen-Z(Z世代)はパーティーに行くことを「面倒くさい」と感じていることがわかりました。またこの世代では、“Bed Rotting”(一日中ベッドの上でダラダラと過ごすこと)や“Carcass Time”(仕事を離れた後は誰ともコミュニケーションを取らない時間を設けることで、心身のバランスを取ること)といった言葉が生まれているように、社交を避け、人との交流を持たない傾向が見て取れます。これはコロナが以前からの潮流であり、コロナがその傾向に拍車をかけたと考えられます。
では、社会的に不可欠であるとされてきたパーティー文化は、本当に若者を中心に消えつつあるのでしょうか? 今回の記事では、海外での事例を紹介しながら、若者の社交性の変化を探っていきたく思います。
「パーソナルスペース」を大切に。Stella Artois - Host One to Remember
ベルギーのビールブランドであるStella Artois(ステラ アルトワ)は、“Host One to Remember(忘れられない会を催そう)”というキャンペーンを実施して話題となりました。このシリーズでは、デザイン/アート/エンターテインメント業界から多くのインフルエンサーが起用されており、各々が友人を自宅に招き、自身の特技を活かしてもてなす様子が描かれています。
フードコーディネーターのJonah Reiderが主催する会では、彼のこだわりを反映した音楽や食事が振る舞われ(逆にテーブルセッティングは気にしないなど)、パーソナルな空間/内容で食事会が進行されました。他にもゴールデングローブ賞を受賞したGina Rodriguezの引っ越しパーティーの様子など、それぞれの個性が垣間見える興味深いシリーズとなっています。
この事例で注目すべき点は、多くのビールブランドで描かれている、外出先での派手なパーティーではなく、限られた友人たちとの自宅での落ち着いた親睦が場面設定となっていることです。実際に生活者の意識を見てみると、パーソナルスペースでのパーティーを好んでいることがわかりました。
具体的なこととして、たとえば、ナイトクラブよりも自宅でのパーティーが好まれ、新しく交流を広げることよりも、既に知る身近な友人と楽しむことを好むこともわかっています。一方でイベントの場にありがちな、ハプニングや、大騒ぎには敬遠的であることが傾向として読み解けます。特に若年層に関しては、パーティーでの暴言や暴力に対して敏感であることもわかり、より安全にプランニングされたイベントを好むようです。
またインドア化には、テクノロジーの進化も影響をしていそうです。NetflixはTelepartyというブラウザ拡張機能を視聴者に紹介し、自宅でのウォッチパーティー(他のユーザーと同時にコンテンツを視聴しながらチャットを交わす)を推奨しています。このようなオンラインを介した新たなパーティー形式も、よりパーソナルスペースでの交流を増やしている要因としても考えられます。
自宅での催しものは、今後ブランドにとって関係構築の接点になるかもしれません。