オリジナル作品は差別化と収益の要
──アムタスはどのような会社なのでしょうか?
山内:アムタスは元々、親会社であるインフォコムの一事業部として携帯電話やスマートフォンを通じてユーザーにデジタルコンテンツを提供しておりましたが、2013年に分社化されました。

山内:かつては「着うた」サービスやEC事業も展開していましたが、「デジタルでコンテンツを届ける」ことを強みとし、電子書籍市場の成長に合わせて、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」を2006年から開始しました。他の漫画ストアとも同様ですが、スマートフォンの画面サイズに最適化していることと、1話単位で作品を購入できることがサービスの特徴です。
──「めちゃコミック」の現在の状況を教えてください。利用者数や作品数はどのくらいなのでしょうか?
山内:月間2,800万人余りのお客様が使用してくれています。また、現在十数万作品を配信しており、恋愛・バトル・ミステリーなど幅広いジャンルを取り揃えています。
しかし、大手出版社の人気作品はどのサービスでも扱われているため、差別化が難しいです。そこで、「めちゃコミック」では、オリジナル作品の制作に力を入れ、競合との差別化を図っています。現在、約2,000ものオリジナル作品を配信し、毎年約100作品の新作をリリースしています。主力は大人の女性向けの恋愛物で、最近では「ロマファン」と呼ばれる中世ヨーロッパ風の世界を舞台にした「ロマンスファンタジー」が人気です。
【画像左】『青島くんはいじわる』(著:吉井ユウ)は2024年7月にドラマ化。
【画像中央】『今夜、うちにおいで~冷徹上司の理性が溶けたら』(著:椿野イメリ)は売上10億円超。
【画像右】『大正身代わり婚~金平糖は甘くほどけて~』(著:でじおとでじこレッド・濔・卯月みか)は売上5億円を突破している。
ペルソナ「ともこさん」が導き出す読者ニーズ
──オリジナル作品作りには、どのような体制で取り組まれているのでしょうか?
高根:制作体制としては、自社編集部で制作するケースと、外部の共同制作パートナーと協力するケースがあります。

高根:どちらのケースでも重要なのは、「誰に向けて作品を作るのか」という視点です。「めちゃコミック」のユーザーの約8割は女性で、その多くが30代後半~40代。このターゲット層に響く作品を作るため、従来の編集者の「勘」や「経験」だけに頼るのではなく、データ分析を活用した制作プロセスを導入しています。
──どのような方法で読者ニーズを分析し、作品作りに活かしているのでしょうか?
山内:まず、読者像を明確にするための詳細なペルソナを設定しました。それが、ペルソナ「ともこさん」です。「ともこさん」は40代の女性で、住んでいる地域や年収、ライフスタイルなどの細かい属性まで設定されています。そして、このペルソナ像とマーケティングデータを基にした、「お金を払ってでも読みたいと思う」訴求ポイントを言語化し、この訴求ポイントが含まれるように意識して漫画を作っています。
──具体的にはどのようなマーケティングデータを活用しているのでしょうか?
山内:活用しているのは、「広告配信データ」「販売データ」そして「ユーザーデータ」の3種類です。「めちゃコミック」は、作品単位で大規模なインターネット広告プロモーションを行っており、各作品の広告配信データが蓄積されています。その中でも特に注視しているのが、ヒットの重要なトリガーになっている「広告バナー」の効果と「無料販促キャンペーン」への反応です。これらのデータから、どの作品が誰にどういった訴求で読まれたのかを分析することで、次にどんな作品が求められているのかを予測できます。

山内:しかし、データはあくまで結果です。大切なのは、そのデータから「ともこさん」像を読み解き、読者がどんな要素に惹かれ、「この作品なら課金してもいい」と感じるかを把握することです。たとえば、「スカッとする展開」や「恋愛によるトキメキ」といった訴求ポイントを整理し、単なる数字ではなく、どのような形で作品に落とし込むかを具体的に言語化して、編集方針として明確にしています。
