仮説を信じて徹底的にやり抜く
──リサーチ結果を活用し、成果につなげるために重要だったことは何でしょうか?
高根:まず、これが自分たちの考える読者像なんだ、と現場の一人一人が納得感を持てることが大切だと考えています。そのために、完成したペルソナを単に発表するのではなく、メンバー全員で一緒に作り上げるプロセスを重視しました。

高根:「ともこさんって、どんな人なのだろう?」とチーム全員で考える期間を設け、ポストイットを用いて意見を共有し合うことで、メンバー全員が自然と「ともこさん」を意識しながら作品作りを進める環境が出来上がったと思います。
もう1つ重要だと思うのが、「仮説を信じて、徹底的にやり抜くこと」です。ペルソナを疑問視することもあると思いますが、「ともこさんに向けて作品を作ればヒットするはずだ」という仮説を信じ、編集チーム全員が本気で取り組みました。
実際、その仮説を信じて制作した作品は、多くの読者に支持され、ヒットにつながっています。「仮説を立てること以上に、まずはそれを信じて形にすること」が成功の大きな要因だったと感じています。とりあえずやってみないと、仮説が正しいかどうかも判断できませんから。
新たな課題は未顧客の獲得
──最後に、今後の課題と展望を教えてください。「ともこさん」のようなペルソナが増える可能性もあるのでしょうか?
山内:まさに、そこが次の課題ですね。「ともこさん」というペルソナを活用した仕組み自体は確立できたと考えています。現在は主に女性向けジャンルを中心に展開していますが、今後は他のジャンルでも、オリジナル作品を広げていきたいと考えています。
ただ、現状では「めちゃコミック」の読者の約8割が女性です。女性向けジャンルのデータは豊富にあるものの、男性向けジャンルのデータは十分に蓄積されていません。読者の2割しか占めていない男性をターゲットにする場合、現在の手法をそのまま適用するのは難しいため、新たなチャレンジが必要になります。“無風”だと、打ち手を探るデータも手に入れられませんからね。
高根:そうですね。「ともこさん」のペルソナを策定した際は、「めちゃコミック」の既存ユーザーから収集したデータを活用することで、具体的なニーズを深掘りできました。しかし、今後、男性や若年層向けに展開するとなると、まず「どこからデータを取るのか」から考えなければなりません。
これまでの手法をそのまま適用できるわけではないため、新しいアプローチを模索する必要があります。試行錯誤しながら新しいペルソナを構築し、次なるヒット作を生み出していくことが、今後の大きな挑戦ですね。
