ショート動画広告のメリット
ショート動画が流行したのは、移動時間や寝る前など、ふとした隙間時間に気軽に視聴できる点がユーザーに刺さったのが大きな要因だ。視聴する前に「この動画を見よう」と意気込む必要がなく、サッとスマートフォンに手を伸ばしアプリを起動するだけで、自身の興味に関連する動画を流し見できるのが、ショート動画の特徴の一つといえる。
手軽に視聴できるショート動画で広告を展開することで、幅広いユーザー層にリーチしやすくなる。また、ショート動画はその人の興味・関心があるものに関連する情報が流れやすくなっているため、比較的高い視聴率が期待できるのもメリットの一つだ。
さらに、興味のない動画はスライドしてすぐ次の動画にスキップできる。これにより、ユーザーに与える広告の不快感を低減することにもつながっている。その広告に興味がある人には深く刺さり、興味がない人はすぐにスキップすることで、商品やサービスに不快感を持たせにくいのも、ショート動画広告の特徴であり、大きなメリットといえるだろう。

ショート動画広告のプラットフォーム別の特徴
ショート動画広告で利用される配信プラットフォームは、主にYouTube、TikTok、Instagramの3つだ。それぞれの特徴を順に紹介しよう。
YouTube
YouTubeショートは、YouTube内に追加された縦型のショート動画機能だ。最大3分までの縦型動画が投稿・閲覧できるが、投稿されている動画は1分以内のものが主流となっている(2025年1月現在)。
YouTubeショートは、短い動画を多くの人に届けられるだけでなく、ショート動画から本編動画へ誘導するなど、幅広い用途で使われるのも特徴といえるだろう。
YouTubeは動画プラットフォームの中でも特にアクティブユーザーが多く、全年代に幅広く動画を届けられるのが特徴だ。
TikTok
TikTokは最大10分までの縦型動画が投稿できる(2025年1月現在)プラットフォームだが、主に投稿されている動画は10秒から60秒までの短いものが多い。縦型ショート動画の中で、特にバズりやすいのが特徴で、TikTokで紹介された商品が拡散され、爆発的に売れる「TikTok売れ」という言葉が話題になったほどだ。
レコメンドエンジンが優れており、AIがユーザーの興味や関心を分析し、ユーザーが好みそうな動画をランダムに流す仕様が、タイムパフォーマンスを重要視する現代の若者の心を掴み、爆発的な成長を見せた。ユーザーの没入感が高く、今では月間の平均視聴時間が最も長い動画プラットフォームといわれている。
利用している主な年齢層は10代〜20代がメインで、最近ではミドル世代の利用も増えてきている。
Instagramは写真や動画に特化したSNSで、ショート動画はリールやストーリーと呼ばれる機能で投稿できる。リールは最長90秒、ストーリーは最長60秒の動画が投稿でき、ストーリーは24時間後に消えるのがほかのプラットフォームには見られない特徴だ。
加工にこだわらないありのままの日常をストーリーに投稿し、その延長線上として、残しておきたい動画はリールに投稿するという棲み分けができている。
利用している主な年齢層は10代〜40代がメインで、Facebookとの連携もされているため、知人との交流に使われる場面も多いのも特徴的だ。

ショート動画広告の配信プラットフォームの選び方
より効果的にショート動画広告を利用するには、数ある動画プラットフォームの中から自社の製品・サービスに最適なプラットフォームを選ぶことが重要だ。
ここでは、配信プラットフォームを選ぶ際のポイントを紹介しよう。
年齢層の確認
自社製品・サービスのターゲットとなる年齢層と、プラットフォームの年齢層が合っていなければ広告の効果が薄れるのは、ショート動画においても同じだ。
年齢層関係なく幅広い人に見てもらいたい場合はYouTube、若者にたくさん拡散してほしい場合はTikTok、コスメなどオシャレな女性に広めたい場合はInstagramなど、ターゲットに合わせたプラットフォームを選定すると良いだろう。
課金方法の確認
YouTubeの場合、途中でスキップされれば料金は発生しないが、Instagramは10秒再生が費用発生の目安になっているなど、プラットフォームによって課金方法は異なってくる。主な課金方法は以下のとおりだ。
- CPM:1000回表示ごとに課金される
- CPC:1クリックごとに課金される
- CPV:視聴回数に応じて課金される
広告の目的や視聴を想定しているユーザー層も意識しながら、課金方法を選ぶと良いだろう。
広告配信タイミングの確認
プラットフォームによって広告が配信されるタイミングや場所が異なる点も注意しておきたい。
縦型ショート動画であれば、ほとんどの場合各動画の合間に流すことになるが、そのほかの広告も利用する場合は覚えておくと良いだろう。

効果的なショート動画制作のポイント
続いて、メインとなるショート動画を制作する際のポイントを紹介しよう。効果的な動画を制作し、広告効果の底上げに役立ててほしい。
ショート動画の仕様を守る
ショート動画広告は縦型のショート動画の仕様を守って作る必要がある。解像度やアスペクト比、動画形式、ファイルサイズ、動画時間などがプラットフォームの仕様に沿っていないと、場合によってはうまく反映されないこともあるので注意が必要だ。
主に推奨されている動画の仕様は以下のとおりだ。
- 解像度→1,080×1,920px(縦向き)
- アスペクト比→9:16(縦向き)
- 動画形式→.MPG
- ファイルサイズ→256GB以下
特別な理由がない限り、基本的に上記の仕様で動画を制作するのが良いだろう。
セーフゾーンを考慮して動画を作成する
ショート動画広告には、セーフゾーンという概念があるのも意識しておきたいポイントだ。セーフゾーンとは、どのデバイスにおいても動画の説明文などの他の文字と重ならないエリアを指す。
基本的に画面上部の少ないスペースや、画面下部の大部分にはユーザー情報や動画タイトル、動画概要などの文字が重なるのが各プラットフォームで共通しているので覚えておくと良いだろう。これらの位置に動画内の文字を置くのはタブーとなる。
また、動画の説明文は白色の文字で入るため、説明文が来る場所には白など文字が見づらくなる背景色を使うのも避けておきたい。
動画の冒頭で視聴者を惹きつける
動画広告の冒頭では、ユーザーの関心を強く惹きつける工夫が必要不可欠だ。ショート動画を視聴するユーザーは、短い時間で情報収集したいというタイムパフォーマンスを重要視するユーザーが多い。自分に必要のない動画だと認識すると、ユーザーはすぐに次の動画へとスキップするのがショート動画の特徴ともいえる。
そのため、動画の冒頭の一瞬で有益な情報を持つ動画だと、ユーザーに認識してもらう必要があるのだ。冒頭3〜5秒でユーザーの興味を惹きつけられれば、「ブランド認知」「メッセージ連想」「購入意向」といった点でも効果が期待できるだろう。
静止画広告を流用するのも効果的
ディスプレイ広告やSNS広告など、静止画広告で高い成果が得られたものを転用し、ショート動画用にアレンジを加えるのも有効な手法だ。
すでに効果がある広告に、ナレーションやアニメーションを加えることで、より情報量が多く、目を引きやすい広告に仕上がるだろう。比較的手軽に制作できるうえ、制作費用も抑えられるのは大きなメリットといえるだろう。
音声にも意識して動画を制作する
ショート動画は、音を出して見ているユーザーが多いため、必ず音声付きで制作したい。ナレーションやBGM、効果音などにも意識して制作すると良いだろう。
一方、移動時間やカフェなどで音声オフで視聴している人がいることも想定しておく必要がある。そのため、テロップなどを入れて、音声なしでも重要なメッセージが伝わる工夫を盛り込むのも重要だ。特に動画の冒頭でわかりやすいテロップを入れたり、テロップにアニメーションを加えたりするのが多く取られる手法だ。
UGCを動画の素材として活用する
UGC(User Generated Contents)とは、一般のユーザーが自発的に生成するSNSの投稿や口コミサイトへのレビューを指す言葉だ。UGCをショート動画広告の素材として活かすのも非常に効果的だ。
企業側が発信する訴求やメッセージだけでは広告感が強くなり、ユーザーへ不快感を与えてしまいかねない。そこで、第三者による評価や口コミを見せることで、動画広告の視聴者への説得力が高まり、自分ごととして捉えてもらいやすくなる。
実際にユーザーが商品やサービスを利用しているシーンを動画内に取り入れるなどの工夫を盛り込むと良いだろう。ただし、UGCを取り扱う際は、そのユーザーへの許可をとる必要があることは覚えておこう。
日にちに余裕を持って広告を入稿する
ショート動画広告は、入稿後すぐに広告配信されるのではなく、広告への審査が入ってから配信されるのが通常だ。プラットフォームによっては審査で広告が承認されるまで時間がかかる場合もあるので、配信予定日が決まっている場合は、期間に余裕を持って広告を入稿するのが良いだろう。

ショート動画広告運用のベストプラティクス
ショート動画広告を効果的に活用するためには、ショート動画の特性を強く活かすことが重要だ。「動画の短さ」を活用し、動画冒頭の数秒でユーザーを一気に惹きつけたうえで、情報を伝えるという流れに持っていく必要がある。
また、ユーザーへの印象を強く残すためには、ビジュアルや音、ナレーションなどの要素を巧みに組み合わせるのも大切だ。それに加え、コンバージョンにつなげるために、明確なコール・トゥ・アクション(CTA)を設定し、動画を制作すると良いだろう。ユーザーに対して何をどう行ってほしいのかを明確に伝えることで、情報の共有から具体的な行動へとスムーズにつなげられるためだ。
これらをうまく成功させるためにも、目的やターゲットを明確にし、広告出稿するプラットフォームをうまく使い分けるのも重要になるだろう。
ショート動画広告の予算配分の手順
次に、ショート動画広告の予算配分方法について紹介しよう。実際に広告を入稿する前の参考にしてほしい。
目標設定とターゲット分析を行う
ショート動画広告の効果を高めるためには、ターゲットに合わせた明確な戦略を立てるのが重要だ。
その広告でブランド認知を向上したい、購入を促進したいなど、達成目標を明確にし、再生数やCTR、CPAなどの具体的なKPIを設定すると良いだろう。
ターゲットとなるペルソナを明確化し、使用するプラットフォーム、広告出稿する時間帯などの戦略を立てるのも重要だ。
予算の優先順位を明確にする
限られたリソースを最適な形で活用するには、予算の優先順位を明確にすることも大切だ。
全体の予算を事前に設定し、過去の広告キャンペーンの結果や現在のビジネス状況なども参考にして、目標に最も寄与する部分に優先的に配分すると良いだろう。コンバージョンが目的の場合、リマーケティング広告に多めに配分するなどといった具合だ。
さらに、キャンペーンごとに初期段階でテスト費用を確保し、結果に応じて柔軟に再配分するのも重要だ。データが少ないうちは、1つのプラットフォームやクリエイティブに偏らず、複数の広告セットを運用するのもときには必要になるだろう。

プラットフォームの特性を考える
各プラットフォームの特性や強みを最大限に活かすことが、ショート動画広告の成功への近道だ。
幅広い年齢層にブランド認知してもらいたいならYouTube、若年層やトレンドに敏感なユーザーをターゲットとするならTikTok、ビジュアルに強い業種であればInstagramなど、自社の特徴やターゲットの性質とプラットフォームの特性を絡めて考えると良いだろう。
プラットフォームによってクリック単価やインプレッション単価が異なるため、効率的な予算配分を考慮したい。
効果測定を行う
広告キャンペーンの成果は常に把握し、次回に向けた最適化を行い続けるのも重要だ。
各プラットフォーム内にある分析ツールを活用し、クリック数やCTR、コンバージョン率などのKPI進捗を常に追い、必要に応じて調整を加えていくと良いだろう。
成果の良いクリエイティブやターゲティングは次回に反映し、逆に効果の低い部分は停止や変更などの措置を取り、効果的に広告運用を回していってほしい。

ショート動画広告のパフォーマンス測定指標
ショート動画広告のパフォーマンス測定指標は、主に以下の3つの動画広告の役割によって分けられる。
- 認知拡大のための測定指標
- 購入検討のための測定指標
- 行動・獲得のための測定指標
それぞれ順に紹介しよう。
認知拡大のための測定指標
ショート動画広告で認知拡大を図るには、視聴回数を増やしてブランドや商品を多くの人に知ってもらい、ユーザーの記憶に残す必要がある。
そのため、認知拡大が目的の場合は、インプレッション数やインプレッション単価、リーチ回数、フリークエンシーなどの測定指標が重要となるだろう。
購入検討のための測定指標
購入への検討段階に入ってもらうためには、商品やサービスの魅力を伝え、購入意欲を高める必要がある。動画内で商品の使い方や特徴を実演し、視聴者が抱える課題を解決できることを提示し、商品ページまで飛んでもらうことが大切だ。
購入検討を分析するのが目的の場合は、クリック数やクリック率、クリック単価といった測定指標が重要になるだろう。
行動・獲得のための測定指標
最終的には、購入や問い合わせなど、実際のアクションにつなげてもらう必要がある。
行動・獲得を分析する際は、コンバージョン数、コンバージョン率、顧客獲得単価などの測定指標を主に見ることになるだろう。
このように、動画広告の役割や目的によって見るべき指標も変わってくるので、常に効果測定と分析を行い、効率的な運用を目指していこう。

ショート動画広告の活用事例
最後に、実際のショート動画広告の活用事例をいくつか紹介しよう。自社で実践する際の参考にしていただければ幸いだ。
マイナビ転職(YouTube)
マイナビ転職では、YouTubeの通常の横動画で、転職に関わるノウハウやキャリアアップを目指す人を応援する動画をメインに発信している。
ところが、ショート動画になると内容は一変し、「仕事あるある」などエンタメ要素の強い動画を中心にアップしている。これにより、ユーザーへ強い共感をもたらし心をグッと引き寄せることに成功しているのだ。
興味を持ったユーザーはマイナビ転職のYouTubeチャンネル登録や、本編の横動画視聴を行い、結果的に企業のサービスへの関心を集めることに成功している。
ユニクロ(TikTok)
ファッション業界のトップ企業ともいえる「UNIQLO(ユニクロ)」のTikTokアカウントでは、ダンス動画やテンポの良い動画が投稿されている。世界各国へ向けた音楽や表現力を使ったアニメーション動画を発信したり、ユニクロの服でコーディネートするチャレンジ動画を発信したりしてユーザーの目を引いているのが特徴だ。
また、人気モデルからのファッションコーデ紹介や、自社のおすすめ製品の紹介動画も人気コンテンツとなっている。トレンドのアイテムや季節ごとに取り入れやすいアイテムを発見できる楽しみがあるのが、人気の秘訣になっているようだ。
また、店舗でのキャンペーン情報を含めることもあり、PR動画として高い効果を発揮している。
SONY(Instagram)
世界的に広範な製品とサービスを提供するエレクトロニクス企業であるソニー株式会社は、Instagramリールで新製品や技術開発の舞台裏を紹介している。
特に、製品開発の背景や技術者のストーリーテリングを通じて、ブランドの価値を高めているのがポイントだ。製品がどのように生まれたか、その背後にある技術者の努力や情熱を伝えることで、視聴者に深い理解や共感をもたらしている。これによりブランドイメージの強化や信頼感、親近感を与えることにつなげているのだ。
鮮明な映像や美しいデザインなど、高品質なビジュアルコンテンツで視覚的に視聴者を惹きつけ、プロフェッショナルな印象を与え、製品やサービスの価値を高めているのも参考にしたいポイントだ。
ショート動画広告を効果的に活用しよう
ショート動画広告を効果的に活用すれば、忙しい現代人にも効率良く自社の製品やサービスを届けることが可能だ。ショート動画広告で求める役割とプラットフォームの特性を分析し、効果的に運用してほしい。
本記事で紹介した、配信プラットフォームの選び方や効果的なショート動画広告制作のポイント、予算配分の手順などを参考にしながら、広告の成功につなげていただければ幸いだ。