利用イメージがわき、「PR感」の出ないクリエイティブの工夫とは
MZ:現在、TikTokで実際に接触できているユーザー層の特徴を教えてください。
高橋:基本的には、視聴者の60%ぐらいが18~34歳の若年層です。とはいえ、ベビーフードの投稿では25~34歳の割合が半数になるなど、投稿内容や商品カテゴリーによっても異なっています。
MZ:クリエイティブ制作ではどのような点を重視していますか。
高橋:「お客様から見ておもしろいか」と「商品の利用シーンを想起しやすいか」を一貫して重視しています。たとえばフリーズドライ食品に馴染みのない方には、“四角い物体”がお湯をかけるとすぐにおみそ汁になっていく様子に新鮮な驚きを感じていただけています。
またスープをご飯にかけるなどアレンジメニューの紹介も多く行い、お弁当やキャンプなど具体的なシーンも取り入れて、利用状況をイメージできる見せ方にしています。
高橋:投稿内容を決めるフローとしては、広告代理店さんにお願いして月に1回アイデアをいただいています。アイデアを元に、どこまで攻めた内容にするかと、企業として守るべきコンプライアンスのバランスなどを話し合いながら社内で詰めています。
またTikTokでは開始2秒のインパクトが非常に大事ですので、そこは意識していますね。企業目線のPR感が出てしまうと再生回数が伸びないため、いかに生活者に寄り添った内容にできるかも常に試行錯誤しています。
MZ:PR感を消すために意識されているポイントはあるのでしょうか。
高橋:商品の良さを紹介するだけだと、その時点で特に若年層には「広告だ」と引かれてしまいます。ですから、「これって本当に公式の投稿?」と思うような作りにすることがカギです。
TikTokはコメントを見たり書いたりしてもらうと再生数が上がるプラットフォームですから、見た方がついコメントをしたくなる要素も大切ですね。例として、離乳食の投稿では「子育ての時にとてもお世話になった」など自分事化してコメントをくださるお客様もいらっしゃり、UGCの生成にもつながっています。
「ミンティアの取り出し口にある溝」でコメント欄を盛り上げる?
MZ:これまでで特に伸びた投稿とその反響について教えていただけますか。
高橋:安定して再生回数が伸びているのはフリーズドライ食品です。まずは単純に「おもしろい」と思っていただくことを目指した動画を制作しており、コメント欄でも「これってどういう技術なの?」といったコメントをいただき、狙い通りの効果がでています。また「フリーズドライのアマノフーズってアサヒ系列のブランドなのか」というコメントもあり、商品と会社名の紐づけにもTikTokが貢献していると実感できました。
この他、予想外に反響があったトピックは、「ミンティア」のトリビアを紹介した投稿の「ミンティアの取り出し口にある溝」です。この動画は300万回以上再生されています(2025年3月時点)。
実は、この動画ではトリビアについて問題を出しものの、その答えはあえて載せない形を取っています。答えは検索すると出てきますので、調べてコメントしてくださる方もいらっしゃるなど、コメント欄も盛り上がっています。
MZ:クリエイティブ制作の過程で、各ブランドのマーケティングチームとはどう連携しているのでしょうか。
高橋:商品を取り扱う時はブランド毀損が発生していないかや、マーケティングの観点で伝えるべきポイントを外していないかを、マーケティング部と投稿一つひとつすり合わせをしています。
マーケティング部の確認を取った後は、表示物の審査部署に提出します。商品名に間違いはないか、誇張表現はないか、その投稿で不快な思いをする方がいないか、会社としての品位を損なわないか。このような、会社としての発信における観点でチェックしています。企業ごとにコンプライアンス意識や気をつけているポイントは異なると思いますが、当社はかなり厳密に取り組んでいますね。
これらの確認作業があるため、クリエイティブの制作は投稿タイミングの約2ヵ月前から動き出しています。社内一丸で、協力体制を構築し発信を実現しています。
