SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

【特集】テクノロジーで変化する、社会、広告、マーケティング

広告業界の重鎮マーティン・ソレル氏が見る「AIとマーケティング」の未来

巨大プラットフォーマーが占有する広告市場で生まれるビジネスチャンス

 CESでソレル氏が繰り返し強調していたのは、「メディア事業のさらなる事業価値」だった。氏の発言をカウントすると、なんと「Media」という単語が「Brand」「Ad」「Marketing」の3倍の回数で頻出していた。その背景には、近年の広告市場構造がある。

 ここ数年のグローバルでの広告「出稿」企業ランキングを見ると、トップはAmazonがダントツで、出稿額は約3兆円(203億ドル:2023年度)。上位10社の顔ぶれも、これまで常連だったP&GやユニリーバなどのCPG企業は少数となり、入れ替わる形でAlphabet(Google/YouTube)、Comcast(Sky/NBC)、ByteDance(TikTok)、Alibaba、PDD(Pinduoduo/Temu)、Samsung(SamsungAds)などの「広告収益を得る企業」による広告投下が激増している。いわば、広告費を投下して回収する「循環」にエコシステムが機能しているわけだ。

 見方を変えると、上記のグローバル広告メディア企業は、自社の広告価値を維持・向上させるために「TAC(Traffic-Acquisition Cost:広告トラフィック獲得コスト)」を増大させているとも言える。TACによるトラフィック獲得は、自社のメディア資産価値を増加させる投資(=設備投資、ソレル氏はCapExと発言)なのだ。

 そうして高めた媒体資産価値を活用し、ブランド企業から広告費(OpEx)として回収する――この「行って来い」のサイクルが、広告業界のエコシステムとして急拡大している

 CPG企業やスタートアップ企業側から見れば、企業価値が100兆円越えの巨大メディア企業によるTAC投下によって、メディア価値がますます吊り上げられ、広告コストは増大していく。広告主(ブランド)企業側は、これを短期的なP/L上のコストとして消化するのか、それともインフラやブランド資産としてのB/S投資を優先するのか。自社のキャッシュをTACに投資することが本当に適切なのか、投資の目的や意味合いを深呼吸して確認したい

 S4 Capitalを率いるソレル氏としては、依然として手間のかかるクリエイティブ領域におけるAI活用よりも、安定的に循環収益を生み出すメディアビジネスへ回帰したいという意図が発言から見て取れる。

 2025年で80歳を迎えるソレル氏の投資矛先は、ブランドづくりに取り組む企業にとって試金石となるだろう。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
【特集】テクノロジーで変化する、社会、広告、マーケティング連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/03/26 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48541

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング