AIの進化は、社会やビジネスをこれからどう変えていくのか?
CES 2025 で行われたNVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏のキーノートは、「今後必要となる領域をすべて取りに行く」という強い意思が明確に示されていた点が非常に印象的でした。発表では、Generative AIの先にある「Agentic AI」から「Physical AI」へのシフトが示唆されていましたが、これはAIの自然な発展を踏まえた必然的な流れと言えます
今回のキーノートは、新たな未来像を提示したというよりも、むしろ「加速するAIの進化の先にほぼ間違いなく訪れる未来」に対して、NVIDIAが何を準備しているのか、そしてその未来に必要なものとは何かを提示する内容だったように感じました。

この内容を紐解くことは、これからの社会やビジネスにどんな変化が起こり、その過程で何が重要になるのかを理解する上で大変有益です。本稿では、キーノートのポイントを整理しつつ、ビジネスパーソンが意識すべき事項を解説します。
ポイント1:基盤モデルが社会インフラになる
まず、NVIDIAの発表を理解する前提として押さえておきたいのが、「AIの基盤モデルが社会インフラとして機能する」という考え方です。
現在のLLM(大規模言語モデル)は、大量のデータを学習した「基盤モデル」を土台としています。この基盤モデルは高い汎用性を持ち、特定のユースケースに合わせて追加学習や、独自データの参照設定を行うだけで、新たなアプリケーションを素早く実装できるという特徴があります。
社会の様々な領域でAIを活用する際、ユースケースごとにゼロからAIを作り込むのではなく、既存の基盤モデルを利用しながら、それぞれの領域固有のノウハウや知識を付与する形へとシフトしていきます。これにより、従来よりも圧倒的にAIのモデルやアプリケーションを作るコストが下がり、結果として基盤モデルは「社会における“共通基盤”として広く用いられることになる」というわけです。
さらに、AIの性能はモデルサイズ(パラメーター数)や学習データ量、計算資源に比例して向上していくことが知られています。これを「スケーリング則」と呼びます。こうしたモデルをより高性能にするために、海外のビッグテック企業を中心に巨額投資と技術開発の競争が激化しているのが現状です。
今回の発表では、進化していく社会インフラとしての基盤モデルを支えるために必要な学習データや計算資源を、NVIDIAがいかに整備しているかが示されました。新世代のGPUアーキテクチャ「Blackwell」の発表や、デスクトップサイズの“AIスーパーコンピュータ”を実現する「Project DIGITS」の発表は、まさにAI時代、膨大なデータを処理することに対応したものと言えます。
基盤モデルが社会インフラになり、それがますますデータ処理できるようになることで進化していく世界が示されたと言ってよいでしょう。