若者世代は「フレーズが印象的なCM」「説明的ではないCM」に反応しがち?
図表3は、2項目における世代効果(=その人の生まれ年と、子供のころの経験の影響)の大小をグラフ化したものです。横軸は生まれ年、縦軸は世代効果の強さを表し、時系列での相対的な変化を示しています。
グラフを確認すると、2項目とも世代の特徴として、1980年生まれ以降は横ばいだったのが、2000年生まれ以降から上昇傾向に転じていることがわかります。
この結果から、世代意識として、若者世代(2000年以降生まれ)は「目や耳にとまるフレーズ(コピー)があるCM・広告」「説明的ではなく『何これ?』と思えるCM・広告」に対してポジティブな反応を示す傾向があるという示唆が得られます。
ちなみに、他の世代の特徴を見ると、たとえば「目や耳にとまるフレーズ(コピー)があると印象に残っていることが多い」の項目では、1965~1969年生まれ前後の効果が非常に高くなっています。
1960年代後半生まれ前後の人が、いわゆる消費世代(20代以降)に突入したのは1980年代です。この時代は、広告コピーにより様々な企業の名作広告が生まれ、コピーライターの仕事が社会的に話題になった時代でした。その影響を受けた世代においては、広告コピーやフレーズに反応しがちという結果が表れていると考えられます。
若者世代は「目や耳にとまるフレーズ(コピー)があるCM・広告」「説明的ではなく『何これ?』と思えるCM・広告」といった、アテンション要素が強いCMや広告に反応する傾向が確認されました。多くの広告に囲まれ、一つひとつの広告をしっかり見ることが難しい環境下で育った若者世代も、アテンション要素強めの広告を見聞きすると、思わず反応してしまうようです。
ここまでは、外的要因、すなわち多くの広告に囲まれることを起点として、若者世代固有の広告意識形成について論じてきました。次は内的要因、つまり彼らが持つ意識の特徴によって、固有の広告意識が形成されている可能性についても考察します。
広告に対しても“タイパ”意識あり?若者世代の広告意識のからくりを考察
映画やドラマの倍速視聴のように、若者世代が動画コンテンツに対して“タイパ”を意識しているなら、CMや広告にも同じような意識で接触していることが想像できます。若者世代の広告意識の特徴として考えられる「アテンション要素が強いCMや広告に思わず注目してしまう」という点について、“タイパ”意識を軸とした考察をします。
まずは、「目や耳にとまるフレーズ(コピー)があると印象に残っていることが多い」という広告表現の嗜好について、どのようにタイパ意識が絡んでいるかを考えます。
目や耳にとまるフレーズ(コピー)は、その広告で伝えたいことを凝縮し、端的に言い表したものが多いですよね。みなさんも印象に残っているCMや広告のフレーズを思い出してみてください。そのフレーズを見聞きするだけで広告の重要なメッセージが想起されるものが多いと思います。
堅い食感や凝縮されたおいしさに特徴のあるスナック菓子のCMでは、商品名を入れた印象的なフレーズ、そしてフレーズから想起される富士山や歌舞伎の舞といった迫力のある映像とともにメッセージを伝えることで、高いクリエイティブ評価を獲得している事例もあります。
若者世代にとってはフレーズや映像を見聞きするだけで「内容を素早く理解できる=タイパが良い」というポイントにつながっているのでは、と考えました。タイパ意識の強い若者世代にとってアテンション要素の強いCM・広告は、思わず注目してしまうのと同時に内容まで理解できることから、結果的に印象に残りやすいという好循環が起きていると考えられます。
