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MarkeZine Day 2026 Spring

グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

成長の鍵は「価値ある体験の持続的な提供」、ビューティー業界のリーダーたちが語る技術革新と顧客体験

未来を見据えた消費者の動向

 消費者がどのように変化しているのか、その鍵を握るのはマーケティング戦略に他ならない。Z世代が消費市場で台頭しつつあり、彼らの習慣、およびTikTokやソーシャルメディアの影響力は無視できない。メイクブランドRare BeautyやヘアケアブランドPattern beautyのセッションでは、この傾向がいかに新しいビジネスチャンスを模索するための道筋を提示しているかが語られた。

Rare Beauty:Z世代の高い要求を発想の源にする

左からThe New Consumer創業者兼編集長 Dan Frommer氏、RareBeauty CMO Katie Welch氏:NRF提供
左からThe New Consumer創業者兼編集長 Dan Frommer氏、RareBeauty CMO Katie Welch氏:NRF提供

 現代の消費者動向に大きな影響を与えるZ世代をターゲットにしている企業として、Rare Beauty(セレーナ・ゴメスが立ち上げたメイクブランド)はソーシャルメディア、特にTikTokを活用したインフルエンサーマーケティングを展開し、迅速に生まれるトレンドを消費者との接点として効果的に利用している。

 若年層が求めるのはブランドの社会的責任や持続可能性に対する真摯な姿勢であり、Rare Beautyはこれに応えるべく、透明性のある製品開発や、環境に配慮した製品ラインの拡充を推進している。また、消費者からのフィードバックを基にした迅速な製品改善プロセスも取り入れており、ブランドロイヤルティをさらに高めるための努力を惜しまない。

 同社CMOのWelch氏は「Z世代は非常に要求が高く、それと同時にインスピレーショナルでもある」と述べ、どうやって彼らの興味を引くか、常に創意工夫をしていることを強調している。

 また、「我々はブランドの精神性を大切にし、消費者の精神的健康を考慮した施策を行っている」と言及し、同ブランドがどのようにして信頼を得ているかを示した。

PATTERN Beauty:ブランド以上の価値を作る

 Tracee Ellis Ross氏によるPATTERN Beauty(ヘアケアブランド)の事例も、非常にインプレッシブだ。Ross氏は、黒人の美しさを称揚し、彼らの文化的アイデンティティを支援することを使命として掲げ「消費者が自分自身を受け入れ、喜びを感じることのできる空間を作りたい」と語っている。

左からThe Business of Fashion 上級特派員 Sheena Butler-Young氏、PATTERN Beauty CEO兼創業者 Tracee Ellis Ross氏:NRF提供
左からThe Business of Fashion 上級特派員 Sheena Butler-Young氏、PATTERN Beauty CEO兼創業者 Tracee Ellis Ross氏:NRF提供

 これに伴い、彼女は様々なヘアテクスチャーに対応可能な商品ラインを充実させ、製品は市場で目を引く存在となっている。

 マーケティングの面でも、黒人コミュニティと直接連携し、物理的空間でのポップアップイベントやデジタルキャンペーンを通じてブランドの認知度を高めている。このようなアプローチにより、PATTERN Beautyは消費者にとって単なるブランド以上の価値を持ち、真のエンディングにつながる長期的な関係を構築している。

テクスチャードヘアの魅力が伝わるPattern beautyのクリエイティブ(ECサイトhttps://patternbeauty.com/より)
テクスチャードヘアの魅力が伝わるPattern beautyのクリエイティブ(ECサイトり)

トレンドを超えて未来へ

 Ulta Beauty(コスメやスキンケア製品を揃えたビューティ専門店)では、サプライチェーン改革が進行中であり、ロボティクスとオートメーションにより物流の最適化を図っている。同社のバイスプレジデントを務めるHeather Lane氏は、「自律型モバイルロボットを使用することで、ピークシーズンでもスケーラブルなパフォーマンスを維持し、トレーニング時間を短縮できる」と語った。これにより、忙しい季節でも効率的に商品を届けることが可能になり、顧客の満足度を向上させる一助となっている。

 さらに、Ulta Beautyはデジタルプラットフォームも強化しており、その副次効果として消費者の行動データを基にしたパーソナライゼーションの推進が図られている。

 「消費者からデータを小さく一つずつ提供してもらうことで、どの製品が求められているかをより良く理解し、適切なソリューションを提供できます」と言及し、データ駆動型の戦略がいかに消費者体験を向上させるかを示した 。

利益追求だけでは足りない

 これらの取り組みが示す通り、美容業界における真の成長は、利益を追求するだけでなく、消費者にとって価値ある体験を持続的に提供することにかかっている。各企業がどのようにして持続可能で利益のある成長を達成するかに注目しながら、業界全体としてこの変革を共有することで、さらに多くの可能性が開かれていくことだろう。

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この記事の著者

岡本 静華(オカモト シズカ)

電通デジタル トランスフォーメーション部門トランスフォーメーション事業部 マネージャー
コマース会社の設立・経営後、2017年に電通デジタルに入社。顧客体験設計のプランニングを中心としたDXコンサルティング業務に従事。リアル店舗を保有する企業のDX戦略策定から、顧客視点・従業員視点に立脚した体験価値の構築まで幅広く実行。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/04/11 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48819

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