ビジョンの実現に向けた変革とは
──B.革新では、様々な制度の新設やリーグ構造の改革が行われます。具体的にどのような点が変わりますか?
たとえば、全選手を対象に年俸総額に上限・下限を設ける「サラリーキャップ制度」の導入が挙げられます。現行の勝敗による昇降格制度においては、チームは降格を回避するために有望選手の獲得に多額の資金を投入する傾向があります。この構造では選手獲得費用に資金が優先的に配分され、組織やクラブの基盤強化、関係者への適切な投資が困難となる状況を生み出しかねません。また数千人規模の観客動員を実現していたアリーナが、チームの下部カテゴリーへの降格により観客数が減少することで、アリーナの維持自体が困難となるケースが散見されます。クラブはこうしたアリーナの維持が経営を圧迫するジレンマに直面し、投資判断が困難となる悪循環に陥ってしまいます。
これらの課題を解決するため、B.革新ではリーグの昇降格制度を廃止するとともに、サラリーキャップ制度を導入します。選手の人件費はチケット販売やスポンサー契約といった収入が確定する前に決定される構造があるため、収入見込みと実際の収入に乖離が生じた場合、クラブが赤字経営に陥るリスクが常に存在します。サラリーキャップ制度の導入によって一定の人件費コストが事前に把握可能となり、収支均衡点の明確化が図られます。これにより経営基盤が強化され、獲得した収益をスタッフの育成や地域社会への投資に振り向けることが可能となるのです。
──B.革新を成功に導くための戦略を教えてください。
多角的な視点で5つの戦略領域を推進しています。すべての領域の詳細な説明は割愛しますが、たとえば「育成システムの拡張・国際化」の領域では育成環境の充実と整備を最重要課題として位置づけています。部活動の地域移行によってリーグの役割が大きくなる中、ユースの国際試合やトップリーグ所属の若手選手の育成などを強化していきます。
またスポンサービジネスの変化を受け設定した「Social Innovation Hub」の領域では、B.LEAGUEが多様なコミュニティを地域社会に浸透させる役割を担うことができると考えています。従来はスポンサー企業から資金を獲得し、競技場に広告を掲載する方法が主流でした。しかし地上波放送でのスポーツコンテンツの減少にともない、この価値は変わりつつあります。そこでB.LEAGUEを介したビジネスコミュニティを形成し、参加したパートナー企業同士の出会いが生まれ新規事業創出につながる可能性や、単独では困難な地域密着型活動の実現を目指します。

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