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【ニッセイ基礎研究所 解説】「共創」視点で再定義する「サステナブル・マーケティング」

目先の売上だけでは生き残れない。未来の市場を生み出すため共創視点で考えるサステナブル・マーケティング

 ニッセイ基礎研究所による新連載がスタート。消費者調査のデータをもとに、単なる環境配慮やCSRの枠組みではない、ブランドの「持続的価値」を磨く戦略的投資としての「サステナブル・マーケティング」について、同研究所の小口裕氏に解説してもらう。「このブランドは、社会にとって意味がある」と胸を張って言えるマーケティングを目指し、次の時代のマーケティングについて考えていきたい。

マーケティングを「社会と創る」時代の到来

 「短期的な売上は作れる。しかし、それがブランド価値にどれだけ貢献しているかは見えにくい」

 あるメーカーのブランドマネージャーの言葉である。日々のマーケティングや販促活動と値引きの応酬に忙殺されながらも、「価格競争から抜け出せない」「生活者の共感が続かない」と感じるマーケターは少なくないだろう。

 その空白を埋めるキーワードとして注目されているのが、「サステナブル・マーケティング」である。単なる環境配慮やCSRではなく、顧客や社会との「共創(co-creation)」を通じて、ブランド価値・業績・人材を同時に高める戦略として再定義されつつある。

 サステナブル・マーケティングとは、企業が生活者・社会・従業員とともに持続可能な価値を共創し、経済的成果と社会的成果を両立させるマーケティング活動全般を指す。それは「社会課題への姿勢」そのものを企業の価値に変換し、共感や納得という新たな競争優位を築く共創型のマーケティングアプローチとも言える。

 経済産業省が掲げる「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」でも、こうした共創型のアプローチは、本業の成長戦略と一体となる中核要素として位置づけられている。

 そこでこのシリーズでは、サステナブル・マーケティングの可能性を実務の視点から解き明かしていく。本稿はその第1回となる。

 ここではまず、マーケターにとって最も気になる「どのような効果があるのか」という疑問に応えるべく、データと事例を交えた全体像を提示してみたい。今後のシリーズ連載では、成功事例の分析や、制度設計、地方市場との共創といった論点へと展開していく予定だ。

サステナブル・マーケティングは理想論なのか?

 最初に、こうした共創型マーケティングが実際にどのような成果を生んでいるのか、具体的なデータとともに見ていきたい。数値が語る「サステナ戦略の実効性」とは何か。その実像に迫っていくことにする。

 「サステナブル・マーケティングは理想論ではないか?」という疑念は、現場の実務担当者にとって無視できない声である。また、最近では「SDGs疲れ」「グリーンウォッシュ」など、企業のサステナブルな取り組みに対するネガティブなワードも耳にすることもあり、もしかしたら国や企業によるアゲンストな空気を感じる方もおられるだろう。

 しかし、そのような中でも、この分野に対する投資を進めながら、単なるCSR(企業の社会貢献)に留まらず、事業に貢献する「マーケティング活動」として成果に着実に結びつけている企業も実は増えてきている。それでは、具体的にどのような成果をもたらしているのか。ここでは、「見える化」されたビジネスインパクトに注目したい。

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そのビジネスインパクトは?成果から見るサステナブル・マーケティング

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この記事の著者

小口 裕(オグチ ユタカ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 准主任研究員

多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)。消費者行動の専門家として、エシカル消費、サステナブル・マーケティング、地方創生を中心に研究・政策提言を行う。過去、20年以上にわたり、自動車、食品・飲料、デジタルコンテンツ、自治体などの多岐にわたる分野の消費者調査や研究に従事。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/15 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49014

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