SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第113号(2025年5月号)
特集「“テレビ”はどうなる?」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

注目マーケティングトピックス2025

デジタル広告・組織コンサルの大手2社と業務提携を発表、直後の代表・三浦氏に聞く「GOのこれから」


広告業界がおざなりにしてきた根源的価値

MarkeZine:三浦さんはご自身のnoteなどで、「新しいクリエイティブ産業をつくりたい」とおっしゃっています。いま、GOは広告業界の課題をどう捉え、どこに向かおうとしていますか?

実際にGOの創業時、「広告業界を変えたい」と口癖のように言っていた。~~​​​​​

~~~今思えば、「“広告業界を変えたい”のではなく、“新しいクリエイティブ産業をつくりたい”」が正しい言語化だったのだと思う。(引用:三浦氏のnote

三浦:大事な前提部分として、GOが考えるクリエイティブの定義からお話しさせていただくと、我々は「クリエイティブ=感情や感覚にアプローチすることで課題を解決する力」としています。日本の広告業界では「クリエイティブ=制作」と翻訳されてしまいますが、もっと手前にある「企画」や「発想」にこそ価値がある。「人ってどうしたらこう動いてくれるだろう?」「みんなどうしたらこのブランドを好きなってくれるだろう?」と考え、アイデアを出すところにクリエイティブの根源的な価値がある、というのがGOの考えです。

 僕は博報堂の出身ですが、昔、博報堂の名刺は「コピーライター=文案家」「デザイナー=図案家」となっていたんですよ。手段としてのコピーやデザインも重要ですが、その手前にある「案」が本来最も大事なんですよね。

 しかし、いつからか、日本の広告ビジネスでは「クリエイティブ=制作し納品するもの」になってしまいました。もちろん、「世の中がどうあるべきか」という構想を大事にしているクリエイターが業界内にたくさんいることは認識しています。ただ、クリエイティブの定義が矮小になっている状況は間違いないでしょう。

 もう少し前提を補足すると、「クリエイティブとは何か」という定義や解釈の問題があるのと同時に、広告業界にはビジネスモデルの課題もあると見ています。大手の広告代理店は、クライアントの課題解決ではなく、メディア(広告枠)の販売をビジネスの軸としています。そうなると、これはモラル云々の話ではなくあくまで構造的な話ですが、その枠にのせるクリエイティブは、言ってしまえば「無償のサービス」のような位置づけになってしまうわけです。

GOの挑戦、新たなクリエイティブ産業をつくりたい

MarkeZine:ビックリマンチョコで例えると、チョコ=メディア(広告枠)、シール=クリエイティブといった理解で合っていますか?

三浦:そうです。シール(クリエイティブ)のほうに注目が集まりがちですが、売っているのはチョコ(広告枠)という構造です。

 僕が博報堂にいた時から、一部の大手広告代理店にしか扱えないテレビの価値が落ちていき、オープンに開かれているデジタル広告の市場が伸びていくことは、目に見えていました。メディア取引の価値は次第に落ちていくであろう中で、メディアを主軸にしたビジネスモデルを続けていてよいのか。メディア取引の価値よりも、クリエイティブによる課題解決のほうが代理店の価値の源泉になるのではないか。そう考えて、クリエイティブ力による課題解決の専門家集団 The Breakthrough Company GOを立ち上げました。

 そうした経緯があり、創業時は「広告業界を変えたい」と発言していましたが、noteで書いたとおりそれは簡単なことではありませんでした。新しいクリエイティブ産業をつくりたいと言っていますが、正直、7兆円ある広告市場ほど大きな産業にできるかはわかりません。そこは割と冷静に見ています。

 ただ、広告代理店のクリエイティブ力は、まだ正味、大手メーカーの宣伝部くらいでしか使われていません。「クリエイティブ=感情や感覚にアプローチすることで課題を解決する力」と広く捉えると、商品開発でも人事でも、さらには農業や教育でも、大いにサポートできることがあると思うのです。

 実際にGOでは、経済産業省の介護を広めるプロジェクトや、東京大学のジェンダーバランス是正に向けた取り組みなど、広告の仕事を超えた課題解決を手掛けています。

介護を「個人の課題」から「みんなの話題」へと転換することを目的とした経済産業省の「OPEN CARE PROJECT」
介護を「個人の課題」から「みんなの話題」へと転換することを目的とした経済産業省の「OPEN CARE PROJECT」
介護を「個人の課題」から「みんなの話題」へと転換することを目的とした経済産業省の「OPEN CARE PROJECT」
東京大学のジェンダーバランス是正に向けたプロジェクト「UTokyo男女⁺協働改革#WeChange」

 クリエイティブ産業という新しい市場を作ることは、日本の全市場にクリエイティブの力を添えていくということ。そこに対して、我々GOがどれくらいの力を発揮できるか、社会でどれくらいの存在感を放てるか――大きなチャレンジだと思っています。

MarkeZine:また新たなチャレンジを前に、ワクワクしているところもありますか?

三浦:何十年も変わらずにいた日本の広告業界で、我々のような小さな会社が業界全体を活性化しようとしている。このこと自体、とてもエキサイティングだと思っています。

 あとは、今まで向き合ったことのない新しい課題とこれから向き合えるのが、とても楽しみです。人間、新たな課題に本気で向き合うと、その過程で新たな自分にも出会えますから。僕、課題フェチなんですよ(笑)、難しい課題がやってくるとテンションが上がるんです。もちろん、自分だけでなくGOのメンバーの成長や、それにより結果的に世の中を良い方向に変えていけるだろうという期待感もあります。

次のページ
AI時代、ありきたりな広告クリエイティブは価値が落ちていく

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
注目マーケティングトピックス2025連載記事一覧
この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/06/09 09:12 https://markezine.jp/article/detail/49127

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング