AI時代、ありきたりな広告クリエイティブは価値が落ちていく
MarkeZine:今回の2社との提携については、AIによる広告ビジネスの変容を見据えているところもあるのではと思います。特に、クリエイティブの領域はAIの影響が大きいですが、このあたりはどう見ていますか?
三浦:大きな岐路に立っていると思います。僕自身、かなり悩むところがあり、もうこの産業は要らなくなるのではと思う時すらあります。というのも、「人間の感情に訴えかけるクリエイティブはAIにはまだまだできない」と昨年まで言っていたんですが、もう既にそれも不可能ではなくなっていると感じています。総じて、広告業界のクリエイターの仕事はかなり減ってしまうだろう、という見解です。
ただ、クリエイターの価値が低くなるかというとそうではないと思っていて、僕はいまのこの状況を、絵画の歴史で写真技術が出てきた時によく例えます。写真という技術が出てきたことにより、それまでの写実的な絵画はほぼ要らなくなってしまった。けれど、その結果、モネやルノワールに代表される印象派や、ゴッホ、ピカソなど自分の個性をぶつけるまったく新しい絵画表現が普及していきました。要は、写実的な絵画が終わったことによって、絵画表現の価値は逆に爆発的に上がったわけです。

広告クリエイティブでも同様に、ありきたりなものや、中途半端なものの制作はAIに代替されていくでしょう。これからも生き残ることができるのは、人間の感情や欲望、社会に対して自分が持っている思いや仮説などをすべて飲み込んで、アウトプットができる人間だと思います。
AI時代の広告ビジネスについて、ひとつ明確なのは「ブランディングの重要性」が高まっていくことでしょうか。
モノを買ってもらうための施策など短期的なプロモーション領域は、これからAIに代替されていくはずです。それに対して、本当に社会に愛される企業・ブランドをつくりあげるために、意志を持って、根気強く取り組み続ける。関係者を説得しながら、時間と労力もかけて、地道にやり続ける――こうしたブランディングに必要な仕事が今後とても重要になってくるだろうと考えています。実際、GOの売上構成も、この数年で約3割がプロモーション、約7割がブランディングになっているんですよ。