電通デジタルの変遷、設立9年で組織規模は4倍に
MarkeZine:はじめに、電通デジタルの組織拡大について、これまでの変遷をお聞かせください。
杉浦: 2016年の創業当初は約600名の組織だった電通デジタルも、直近では約2,500名規模になりました(2025年6月時点)。企業のマーケティング活動がデジタルにシフトし、DXが求められる中、我々がカバーする領域へのニーズが高まっていることが、拡大の大きな要因です。我々もそのニーズにお応えできるよう、CX領域に強い電通アイソバー、AI領域に強いデータアーティスト社との統合などを含め、専門性をもって課題解決できる人材を拡充してきました。

最近は新卒入社の割合も高まっていますが、現状約7割が中途社員です。即戦力で専門性の高い人材を採用することを創業当時から意識してきました。
MarkeZine:そうなると気になるのが組織カルチャーの醸成です。ダイバーシティ豊かな組織になっていることを前提に置いた上で、電通デジタルのカルチャーはどのように形成されていますか?
杉浦:その点については、我々も重点を置いて議論を重ねています。たしかに、多種多様なバックグラウンドをもった専門人材が集うダイバーシティの高い組織になっていますが、「先端的であり本質的なマーケティングを、先頭に立ってストイックに突き詰めていく」という根っこにあるカルチャーは共通しているように思います。
デジタルマーケティングの領域では、ともすると、顧客視点ではない“数字的な成果”に流れてしまうこともありますよね。ですが、そちらに安易に流されず、最終的なゴールを大事にする考え方・価値観を持った方、“マーケティング”が本当に好きな方が多く集まり、今も残っている印象です。

小林:そうですね。私が見ているエクスペリエンス&テクノロジー領域(DX、ITシステムなど)においても同様の印象があります。この領域は、ファンクションとしてはコンサル会社と重複する部分もありますが、「人の心を動かしたい」「世の中をより良くしたい」といったビジョンを持っているか否かで、提供価値は変わってきます。杉浦とは見ている領域がまた違いますが、根っこの部分について違和感はなく、共有できていると感じます。

広告代理店の分業制に限界が、2025年1月に組織を改編
MarkeZine:デジタルマーケティングの領域は進化のスピードが速く、電通デジタルがケイパビリティを維持・強化するためには、比較的スピーディな組織戦略が必要になるのではと思います。ここからは、電通デジタルの組織戦略について教えてください。
杉浦:創業から8年ほどの間、移り変わりの激しいデジタル広告業界にいる企業として、私たちはほぼ毎年のように組織の構造や機能をチューニングしてきました。もちろん、組織改編をする際にはその背景や戦略的な意図を丁寧に伝えるようにしていますが、現場には「組織は変化していくもの」という心構えが定着し、変化を受け入られる組織になっていると思います。
直近では、2025年1月に大きな組織改編を実施しました。細分化されていた組織の壁を壊し、より大きな領域でくくり直したのが今回の改編です。

具体的には、組織全体を「MC(マーケティングコミュニケーション領域)」「XT(エクスペリエンス&テクノロジー領域)」「CP(コンサルティング&プロデュース領域)」「SF(ストラテジックフォーカス領域)」の大きく4つの領域に区分しました。電通デジタルの本領域であるMCとXTを整理した上で、これから注力していきたい領域としてCPとSFを明確にした形です。
MarkeZine:今回の改編にはどのような背景・狙いがあったのでしょうか?
小林:クライアントの課題がさらに複雑化・高度化し、単機能の組織では解決が困難になってきているという背景がありました。たとえば、デジタル広告一つとっても、運用するだけでなく、バナーのクリエイティブからWebサイトでの体験まで、統合的に考えなくてはなりません。昔のように「デジタル広告を施策として単体で考える」というような時代は過ぎ、現在は各領域が溶け合い、境界線も曖昧になってきています。
広告代理店の分業制に限界が訪れている中、これからもクライアントへの提供価値を高めていくために、一気通貫で動ける体制を構築しました。