高単価・高収益も。カテゴリー戦略による4つのメリット
カテゴリー戦略には、事業成長において次の4つのメリットがあると田岡氏は話す。
1.ブランド強化
カテゴリーリーダーになれば、そこでNo.1ブランドとなり、結果として顧客に選ばれ続ける。つまりブランドが強化され、競争から脱することができる。
2.市場の最大化
顧客の潜在課題を解決し、新しいカテゴリーをつくることで、市場の成長のポテンシャルを最大化できる可能性がある。
わかりやすいのは、近年成長している「グミ」市場や、かつて一世風靡した「食べるラー油」市場の例。最近はコンビニでグミのコーナーが大きくなっており、食べるラー油に関しては、スーパーの“調味料売り場”から拡張し、食べるラー油の売り場ができていた。つまり、鈍化の傾向があるカテゴリーでも、顧客の潜在課題を発掘し、カテゴリーを活性化させることは可能で、それは新たな市場の成長に繋がる。
3.高単価/高収益
人はカテゴリーでおおよその価格を認識する。「オンライン英会話」というと月1万円程度を想定する人が多いが、「英語研修」であれば数十万円でも違和感がないかもしれない。自社がどのカテゴリーにいるかによって、期待される価値が変わり、価格が変わるのだ。同時に高付加価値化を実現できれば、利益体質をつくっていく上でもカテゴリー戦略は有用である。
4.組織、採用の強化
カテゴリーでNo.1になることで、顧客に選ばれるだけでなく、優秀な採用候補者にも選ばれやすくなる。またカテゴリーが明確になることで、「自分たちは何屋なのか?」が明確になり、組織の方向性も示しやすい。
なお、カテゴリーNo.1の企業が必ず多額のマーケティング投資をしているわけではない。カテゴリーは必ずしも日本・グローバルに向けたものである必要はなく、「大阪・梅田駅周辺のイタリアンといえば〇〇」といった戦略でもよいわけだ。自社のビジネスゴールに合うカテゴリーを選べば、必ずしも大きな予算がなくても実践できる点もカテゴリー戦略の特長と言える。
顧客が抱える潜在課題が重要、カテゴリー戦略を始めるには?
次に田岡氏は、カテゴリー戦略の実践のポイントとして「顧客の潜在課題の発掘」を挙げた。

「顧客の頭の中でどんな言葉を浮かべてもらうかが、カテゴリー戦略の考え方です。大事なのは、常に顧客視点で考えること。顧客が抱える潜在課題を定義し、自社ならではの価値を提供することがカテゴリー戦略に繋がります。単に企業目線でキャッチ―なカテゴリーをつくろうとして大喜利になってしまわないよう注意が必要です」(田岡氏)
より具体的なヒントとして、田岡氏は顧客の潜在課題を見つけるためのアプローチを4つ紹介した。
顧客の潜在課題を見つけるためのアプローチ例
1.ボトルネック分析:顧客が直面するいくつかの顕在課題に対して、実際のところ人、手段、情報、カネのどの不足が根本課題となっているか「ボトルネック」を見つけだす。
2.時代の変化を捉える:変化によって社会に生じている歪みにより、新しい課題や不満が生まれていないかを検討する。その歪みと消費者のニーズが交差するところに新しいカテゴリー創造のチャンスがある。
3.トレードオフの解決:今まで顧客が「そういうものだ」と諦めていたトレードオフを解決する手段を提供できるか考えていく。
4.業界の構造問題の解決:タクシーの需給問題によって、必要な時にタクシーが捕まらないという構造的な課題に切り込んだUberが好例。顧客が気づかずに直面していた問題を見つけていく。
これらのアプローチを通して「顧客の潜在課題をいかに一言で言語化するか」が、カテゴリー戦略はもちろん、マーケティングの本質的な部分であると田岡氏は話す。また、潜在課題や独自価値を定義できたとしても「スキマバイト」「ロボット掃除機」のように、良いカテゴリーキーワードを見つけるまでに苦戦することも多いだろう。言語化する際には、新しいけれどわかる、ありそうでなかったという「新規性・わかりやすさ」の2点を意識すると良いそうだ。