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博報堂リサーチ&データ

若者から広がる「界隈消費」に見るマーケティングの“これから” 後編

「界隈」発想マーケティングの重要性

 今回の調査から、「界隈」とは一過性の流行り言葉ではなく現代社会に定着し始めた新たな“コミュニティ概念”であることがわかりました。そのため、今後「界隈」という考え方を利用したマーケティングはより一層重要になってくると考えます。つまり、企業側の都合に合わせて生活者をくくるような「For企業」型の従来マーケティングとは異なり、生活者の「好き」や興味関心軸でターゲットとなる「界隈」を見つけ、その「界隈」を盛り上げるような「For生活者」な提案をする「界隈」発想のマーケティングが求められるようになるだろうと考えます(図表9)

(タップで画像拡大)
図表9 「界隈」発想のマーケティングとは(タップで画像拡大)

 そこで博報堂“界隈研究チーム”では、「見つける→学ぶ→盛り上げる→広がる」の「界隈」発想のマーケティングプロセスを提案しています(図表10)

(タップで画像拡大)
図表10 「界隈」発想のマーケティングプロセス(タップで画像拡大)

 たとえば、「見つける」フェーズで定量調査/SNS分析を基に対象商品/サービスと親和性のある「界隈」を見つけ、「学ぶ」フェーズで定性調査/ソーシャルリスニングを基に「界隈」について深い部分まで理解していきます。

 特に「界隈」は個々の興味関心によって自然に形成されるものであり、性年代によって一定の傾向は見られますが、デモグラのような一面的な理解ではなく多角的に「界隈」を理解していくことが重要であると考えます。

 加えて、既に形成されている「界隈」に寄り添ったマーケティングを行うためには、企業側が伝えたいメッセージを一方的に発信するのではなく、「界隈」ファーストで「界隈がどう受け取るか」をしっかり考える必要があります。特に“界隈研究チーム”では“界隈アプローチ4原則”を提唱しています。

【「界隈」アプローチ4原則】

  1. カテゴライズしない
  2. リスペクトを忘れない
  3. ポジティブ文脈で発信する
  4. 「界隈」における活用シーンを提案する

 加えて今回の調査から、現代社会において「界隈」は、人々のつながりや自己実現の場として一定の役割を果たしている一方、経済的、時間的、そして心理的なコストという負の側面が存在し、一部の参加者は疲弊を感じている可能性も否定できないことがわかりました。

 今後「界隈」発想マーケティングを進めていくためには、「界隈」の負の側面でなくポジティブな価値がより感じられるよう、製品やサービスなどを通して企業が「界隈」の価値を後押しするところにチャンスがあるのではないでしょうか。たとえば、「界隈」に特化したアイテムやスキルのシェアリングサービスを提供することで、手軽にみんなで協力できる環境が整い、人とのつながりを感じながらも個人の負担を減らすことが可能になります。他にも、「界隈」のネガティブな情報を目にしなくて済むよう、自分に必要な情報、ポジティブな情報だけ集めてくれるキュレーションサービスなども考えられます。

 「界隈」発想のマーケティングを成功させるためには、その「界隈」を形成する生活者に受け入れてもらうことが何より重要です。つまり、生活者が抱える不安や不満に丁寧に向き合いながら、「界隈」が本来持つポジティブな価値を引き出し、盛り上げていくことが求められます。企業の製品やサービスを通じた継続的なサポートは、そうした価値の最大化と信頼形成につながり、「界隈消費」の活性化にも寄与すると考えられます。その結果として、「界隈」はより多くの人々にとって、持続可能で魅力的な“居場所”として根づいていくのではないでしょうか。

<マーケティングへの示唆>

  • 生活者視点で市場を捉える「界隈」発想マーケティングが必要になってくる
  • 「界隈」はデモグラなどではくくりきれない多面的なつながりであり“深い理解”が重要
  • 「界隈」に寄り添うための“アプローチ4原則”を心がける
  • 生活者が抱える不安や不満に向き合いながら、「界隈」のポジティブな価値を引き出し盛り上げていくところに企業のチャンスあり

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この記事の著者

保戸田 未桜(ホトダ ミオ)

株式会社博報堂 ストラテジックプラニング局 マーケティングプラナー
2020年博報堂入社。ストラテジックプラニング職として、 飲食、飲料、自動車、化粧品、保険などのクライアントのブランディングからコミュニケーションプラニング、DX推進業務まで幅広い領域の戦略策定を行う。データサイエンティストとしてデータ解析や機械学習案件も担当。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/03 09:30 https://markezine.jp/article/detail/49345

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