「Mixed Reality Makeup」はコスメ売り場のゲームチェンジャーに
小野:「Mixed Reality Makeup」のような技術が広がっていくと、メイクの「テスター」にも大きな可能性が開かれるのではないかと思います。メイクを通して新たな自分に出会いたいと思う欲望もある一方で、「失敗したくない」という欲望が強くなっているのもまた事実です。消費者の失敗したくないという心理を汲んでパーソナライズできる企業には大きなチャンスがあると思います。
大石:まさに、従来のテスターをアップデートする形で、「Mixed Reality Makeup」は売り場のゲームチェンジャーにもなり得ると考えています。
そもそも、従来のテスターはその役割を果たせているのか、疑問に思うことがありました。手の甲に色をのせるのと、実際に頬やまぶたに色をのせてメイクした時とでは、その印象に大きな違いがあったのではないでしょうか。「自分に合うかテストする」という本来のテスターの役割を果たせていないために、「せっかく買ったのに失敗した」といった体験をさせてしまっていたのではないでしょうか。

小野さんのおっしゃる通り、特にZ世代以下の方は、失敗することを苦手に感じる方が多いですよね。情報社会を生きてきた彼らは、買い物においても失敗を避け、先回りで情報を得て行動する傾向にあり、常に“正解”を求めてしまうのでしょう。
そういった方々にももっとメイクを楽しんでいただくために、「Mixed Reality Makeup」は現在、BtoBでの事業化を進めています。プリントシール機くらいのサイズで「Mixed Reality Makeup」をソリューション化し、小売店や百貨店のカウンター、ショッピングモールなどに設置いただくイメージです。
新しい自分との出会いと、そこから生まれる新たな消費
小野:その時、店舗で「Mixed Reality Makeup」を利用するアイディアルターゲットはどのような方たちでしょうか?
大石:ペルソナはいくつか設定しています。たとえば、コスメが好きで色々と試したい方はもちろん、綺麗でいたいけど忙しいから自分のことは後回し、店舗でじっくりメイク用品を選ぶ暇もないような母親世代の女性や、ジェンダーを問わずメイクを始めたばかりで本当にまだ何もわからない若年層などです。
小野:そんな人たちに、買い物の合間の5分でパパッとシミュレーションしていただくようなイメージですね。「Mixed Reality Makeup」では短い時間でもたくさんのパターンが試せるので、買い物の失敗を回避するだけでなく、「意外に緑色のアイシャドウが似合う!」といったセレンディピティ的な出会いを通して、新たな消費が生まれるかもしれません。
大石:そうですね。小売店舗においては、体験価値による集客以外にも、人気カラー以外の販促に繋がったり、大量のテスターの準備・管理をする手間や費用が削減されたりといったメリットをご提供できるはずです。体験データから来店客の好みの傾向や意外な売れ筋がわかりもします。