7月に「Marketing Cloud Next」を提供へ
Agentic Marketingのビジョンを多くの企業が実現できるよう、セールスフォースは製品アーキテクチャーを見直した。マーケターとAIエージェントが協働する新しいマーケティングのための仕組みをケルマン氏は「Agent Marketing Stack」と紹介した(図1)。このテクノロジースタックは、一番下のメタデータプラットフォームから始まり、Data Cloud、後述するMarketing Cloud Next、Agentforceで構成されている。

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「このスタックの特徴はオープンであること」とケルマン氏は強調する。Data Cloudには、400超のデータソースへのコネクターが用意されている。また、Marketing Cloud Nextでは、メール、メッセージングアプリ、Web広告などのチャネルへの接続、AgentforceではGeminiやGPTのような汎用LLMだけでなく独自構築のLLMへの接続が可能だ。
そして、このスタックの中でもイベントの目玉として取り上げられたのが、2025年7月から一般提供を開始する「Marketing Cloud Next」である。元々、Marketing Cloudは、2013年に買収したExactTargetを中核とする製品で、その後に買収した複数の製品の統合を経て、強化を続けてきた。世界的に多くのユーザーを抱える。一方、新しいMarketing Cloud Next は、Agentic Marketingを実現できるよう、Data Cloudを組み込んだマーケターのための次世代アプリケーションになる。

Marketing Cloud Nextにより、顧客体験は大きく変わる。というのも、Data Cloudからゼロコピー/ゼロETLでデータにアクセスし、パーソナライズしたコンテンツを提供できるよう、パーソナライゼーションエンジンを再構築したためだ。また、Data Cloud上にMarketing Cloud Nextを構築したことで、マーケティング組織は、アッパーファネルの領域だけでなく、セールス、コマース、カスタマーサービスなどがカバーする領域も含め、ファネル全体へのシームレスな接続ができるようになった。
Marketing Cloud Nextを提供開始するからと言って、旧Marketing Cloudがなくなるわけではない。これまでMarketing Cloudを利用してきた企業のマーケティング組織には、Journey Builderを使って作成した多くのキャンペーン資産が蓄積されている。新しくMarketing Cloudを採用する場合はNextから利用すればいいが、既存顧客に対しては、これまでのキャンペーン資産を流用したい場合に備えて、セールスフォースは2つのツールを併用できるようにした。