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注目マーケティングトピックス2025

SalesforceがAIエージェントと描く「Agentic Marketing」の未来

 米国時間6月11日-12日、セールスフォースはシカゴでマーケター向けの年次イベント「Connections 2025」を開催した。今回のテーマは「Become an Agent Marketer」。ホストを務めたアリエル・ケルマン氏(President & CMO, Salesforce)は、マーケターとAIエージェントとの協働が顧客体験の向上に貢献するビジョンを示した。本稿では、キーノートで語られたトピックスをお届けする。

「Do-Not-Reply」からの脱却を

 「もしすべてのマーケティングメッセージが、お客様との『双方向の対話』のきっかけになるとしたらどうなるだろうか?」という問いかけから、ケルマン氏は話を始めた。この質問の意図には、今のデジタルマーケティングの“慣例”への問題提起がある。

アリエル・ケルマン氏(President & CMO, Salesforce)
アリエル・ケルマン氏(President & CMO, Salesforce)

 現在、デジタルマーケティングの王道は、見込み客へのアプローチでメールを利用することだ。しかし、その内容には必ず「Do-Not-Reply(このメールは送信専用です)」の文言がある。ここで受け取り手の興味を引くことに成功すれば、リンクをクリックしてもらい、その先のジャーニーに進めるが、ほとんどの場合はそのままゴミ箱行きになってしまう。対話可能なテキストメッセージを使う場合ですら、リンク付きのメッセージを送るまでだ。広告でも同様に、Webページへの誘導までとなり、マーケターは「リンクをクリックしてくれたか」に一喜一憂しているのではないだろうか。

 「対話を自ら拒絶するような『Do-Not-Reply』のメールは、既存のデジタルマーケティングの行き詰まりの象徴のようなものだ」とケルマン氏。これを見直さない限り、カスタマージャーニーを先に進めることは難しいと指摘する。そして、この状況を改善しようとケルマン氏が提案したのが、あらゆるマーケティングチャネルから双方向での対話を実現する「Agentic Marketing」である。

カスタマージャーニーのドライバーは「AIエージェント」へ

 Agentic Marketingでは、カスタマージャーニーのドライバーになるのは「AIエージェント」だ。AIエージェントができることは大きく3つある。第一に、データを理解すること。マーケティングのためのAIエージェントなので、顧客に関するあらゆるデータにアクセスできることが、その理解の前提になる。第二に、自律的に計画を立てること。顧客が何かを質問した時、AIエージェントは質問に関連するデータを参照し、達成するべきことから逆算し、やるべきタスクを複数のステップに分解して再構成する。第三が、計画に則してアクションを実行することだ。人間が辞書をアップデートしなければならないチャットボットと異なり、AIエージェントは自律的にアクションを実行できる

 この能力が、これまでのマーケティングの常識「Do-Not-Reply」を変えることに役立つ。「私が話す機会のあるCMOのほとんどは、チームに求められる仕事の量が、実際の時間の2倍から5倍にも達していると訴える。 AIエージェントのメリットは、従業員の能力を大幅に拡張できることだ。同時に、従業員がやりたくない単純で面倒なタスクから解放し、もっと楽しいタスクに専念できるようにする。AIエージェントに作業負荷の一部を移転できれば、マーケティングチームの業務の質は向上する」とケルマン氏は述べた。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/07/02 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49402

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