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新規顧客と取引先27店舗を獲得。老舗製薬会社が語る、D2Cブランドの大丸東京店「明日見世」活用法

 EC・D2Cブランドが共通して抱える課題、「新たな顧客層へのリーチやブランドの信頼性向上に限界がある」「自社でのポップアップストアの開催はハードルが高い」。こうした課題に対し、大丸松坂屋百貨店が提供する「明日見世」は新たな選択肢を提示しています。本記事では、明日見世を活用して、オリジナルコスメブランドの販売で成果を上げている、創業130年の老舗・三省製薬の取締役である藤井章夫氏と、明日見世プロジェクトマネジャーの和田房恵氏にインタビュー。オンライン施策の限界を感じていた同社が、わずか1年で新規取引先27店舗を獲得するとともに、リピーター・ロイヤルカスタマーを増やした秘訣を聞きました。

老舗百貨店のマーケティングソリューション「明日見世」とは

──まずは、三省製薬の事業概要と展開されているオリジナルブランドについて教えてください。

藤井(三省製薬):三省製薬(本社:福岡県大野城市)は、創業130年の歴史をもつ、美容成分の研究開発に取り組んできた製薬会社です。代表的な成分「コウジ酸」は、日本で初めて医薬部外品の美白有効成分として承認されました。主に美容成分の開発や化粧品・化粧品原料のOEM、自社ブランドも展開しています。

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三省製薬株式会社 取締役 藤井章夫氏

藤井(三省製薬):自社ブランドは、エイジングケアブランド「DERMED(デルメッド)」、地域貢献をテーマに掲げる産官学連携により開発したスキンケアブランド「yameKAGUYA(やめかぐや)」、ジェンダーフリーの“色づき美容液”「IROIKU(イロイク)」の3つとなります。

──続いて、大丸東京店の「明日見世」について教えてください。

和田(明日見世):明日見世とは、大丸松坂屋百貨店が運営する「複合型体験ストア」です。通常のポップアップストアより長い、3ヵ月サイクルで商品・ブランドを入れ替え、中長期にわたってお客様との出会いを創出しています。接客や売り場づくり、在庫管理などは大丸松坂屋百貨店のリソース・ノウハウを活用し、企業様の負担を最小限に抑えながら百貨店進出にトライしていただけます。

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株式会社大丸松坂屋百貨店 DX推進部 デジタル事業開発担当 明日見世プロジェクトマネジャー 和田房恵氏

和田(明日見世):2021年のオープン以来、304ブランドが出品、出品満足度89%、再出品意向74%(※取材時点)と高い評価をいただいています。

オンライン施策の手応えのなさが課題だった

──三省製薬は、明日見世でどういった施策を展開されているのでしょうか。

藤井(三省製薬):明日見世には2021年から3度出品し、2024年9月のリニューアル時からは1年間、プレミアムプランという最上位のプランで継続出品しています。

和田(明日見世):プレミアムプランでは、専任のアンバサダー(店頭スタッフ)による質の高い接客や、商品の魅力を最大限に引き出す専用区画での特別なVMD(ヴィジュアルマーチャンダイジング:売り場づくり)、大丸松坂屋百貨店のアプリやレシートを使ったクーポンやアンケート施策の提供など、百貨店ならではのノウハウをフル活用したサポートを提供しています。また、出品後は接客を通じて得られた、顧客インサイトを記載したフィードバックレポートをお渡ししています。

 三省製薬様では「東日本でのブランド旗艦店」の位置づけで、長期的に「明日見世」を活用いただいていますね。

「企業ミュージアム」というコンセプトで、年表や開発秘話を展示
「企業ミュージアム」をコンセプトにした三省製薬のブースでは、企業の歴史や美容成分の開発秘話を学びながら、3ブランドの商品を試せる。VMDは、明日見世と共同で企画制作
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──明日見世に出品する以前は、どういったマーケティング課題があったのですか?

藤井(三省製薬):SNS広告を中心に、インフルエンサー投稿、アンバサダー企画など幅広くオンライン施策を展開しています。情報量の多いオンライン市場の中では、ブランドの独自性を伝えて、認知向上から購買行動につなげることが年々困難になっていると実感しています

 特に、「IROIKU」は“色づき美容液”という新しいコンセプトの商品なので、実際の使用感や使用シーンなどをお客様にイメージしていただくことが難しく、デジタルだけで商品価値を伝えることに課題を感じていました

和田(明日見世):また三省製薬様は、歴史、130種類以上の独自美容成分開発、医薬部外品有効成分の第1号取得など、伝えたい企業価値が豊富にある企業様です。

藤井(三省製薬):ええ。知ってもらいたいことはたくさんあるのに、広告や活字だけではすべてを伝えきれません。そういった背景から、発信力と影響力がある新たなリアルのタッチポイントを探していました。

なぜポップアップではなく明日見世か?三省製薬が語る4つの決め手

──明日見世を選んだ理由も教えてください。

藤井(三省製薬):主に4つあります。1つ目は、企業の歴史やブランドストーリーを含めた「コーポレートブランディング」が、質の高いVMDと大丸松坂屋のアンバサダーによる高い接客力でできることです。並べ方、光の当て方に至るまで細かく相談しながら、共同で企画・制作しました。明日見世でのVMDを参考に、他商業施設への展開にも活かしています。

 2つ目は、「大丸ブランドのお墨付き」が得られること。一般のお客様はもちろん、商業施設のバイヤーにも「大丸に出品しているのなら安心できる会社・商品」だと感じてもらいやすくなります。

 3つ目は、東日本でのリアル拠点にできること。ポップアップストアとは異なり、中長期での実施を前提にしているからこそ、福岡の本社から離れたエリアにある「ブランド旗艦店」として機能し、リアルでのリーチに貢献しています。

 4つ目は、ポップアップストアとの連動。三省製薬では大丸東京店の別フロアやその他の商業施設にて、ポップアップストアも出店しています。しかし、一般的なポップアップストアの期間は1週間程度です。購入いただいたお客様へ「明日見世ではいつでも販売しています」とご案内できることで、新規顧客の獲得だけでなく、リピーター獲得に直結していますね。

取引先27店舗増!成長の鍵は、5分超の接客69%を実現する「対話力」

──出品の成果をお伺いします。他店のバイヤーが訪れることもあるそうですが、BtoBのビジネスにおいてもプラスの影響が生まれているのでしょうか。

藤井(三省製薬):はい。東京駅直結という立地の良さからか、全国のバイヤーに訪問いただき取引先の開拓につながっています。具体的には、新規の取り扱いが27店舗増加したことに加え、ポップアップストアの引き合いも多数いただきました。また、大丸松坂屋百貨店が発信するプレスリリースやメディアリレーションも追い風となり、経済誌経由での問い合わせも増加しました。

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明日見世では、取り扱っている約20ブランドが定期的に入れ替わるため、バイヤーも多く訪れるという

和田(明日見世):やはり、営業用のカタログで伝えられることには限界があると思うんです。その点、三省製薬様は明日見世を「BtoBのショールーム」としても効果的に役立てていただいています。

──続いて、BtoCの面で得られた成果についても具体的に教えてください。

藤井(三省製薬):新規顧客獲得および、既存顧客のエンゲージメント強化で大きな効果を感じています。同時並行でポップアップストアも活用し、相乗効果が生まれました。

和田(明日見世):ポップアップストアでブランドを知った新規のお客様が、明日見世に戻ってくるサイクルが出来上がっており、リピーターやロイヤルカスタマーが加速度的に増えているのを感じます。

──明日見世での成功要因はどのような点だと考えられますか。

藤井(三省製薬):アンバサダーによる「ニーズを引き出す力」がポイントだと思います。自分たちでポップアップストアに出店しても、お客様を立ち止まらせて話を聞いてもらうのは至難の業です。しかし、アンバサダーの接客だと、5分以上接客していただいた割合が69%という圧倒的な結果が出ています。改めて、「プロ中のプロ集団」なのだなと驚きました。

和田(明日見世):アンバサダーは、商品のストーリーや特性を深く理解してから店頭に立ち、リアルな使用感や具体的な利用シーンまで踏み込んで伝えられているため、結果的に高い接客率につながっていますね。

「顧客の声」が次の武器に。データとインサイトを得るための2つの仕掛け

──アプリやレシートを使ったキャンペーンについても教えてください。

和田(明日見世):レシートキャンペーンは、大丸東京店の購入顧客に向けて広く実施できる「リーチ重視」の販促施策です。対象フロアや金額などのお買い上げ条件に当てはまるお客様に対して、サービスの告知やサンプリングの交換券となるレシートをお渡しし、明日見世の区画に誘導します。

 一方、アプリキャンペーンは、大丸松坂屋のアプリ会員264万人(2024年度実績)から、エリアや性別、年齢などをセグメントし、アプリ内でクーポンを配信。来店を促すとともに、アンケートやサンプリングが可能で、「質」を重視したテストマーケティング的な販促施策と言えます。なお、明日見世でアンケートやサンプリングをする場合、アンバサダーは先に必ず商品説明や体験を促すようにしています。これによって、単なる「バラマキ」に終わらないマーケティングを実現します。

──店頭の様子を見ていましたが、サンプリングをきっかけに接客を受けた方が、ブランド未認知でも次々と商品を購入されていたのが印象的でした。

藤井(三省製薬):購買意欲の高いお客様へ効率的に接触でき、「買い回り」を促す効果も実感しています。特に印象的だったのは、レシートクーポン施策で1万5000円以上購入した方にIROIKUのサンプルを配布した際、普段はDERMEDを購入される50代女性が、IROIKUにも興味をもってくださったことも多いです。

 また、アンケートの結果は、3ヵ月ごとに発行されるマーケティングデータを集計・分析したレポート(プレミアムプランのみ提供)で詳細に確認しています。来客データに加え、接客中に得たお客様のリアルな声がまとまっており、そこから得られたインサイトは企画や販促物にも活用させてもらっていますね。

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明日見世には、来店者属性(年齢・性別・滞在時間)を解析するカメラが設置されている。レポートでは、カメラを通じて得られたデータも確認できる
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“モノを売るだけ”ではない。D2Cブランドの未来地図

──今後の展望をお聞かせください。

藤井(三省製薬):この1年間、着実に段階を踏みながら、明日見世での土台を固めてきました。明日見世という拠点があるからこそ安心して、他店舗やポップアップストアでの展開、新商品開発などのビジョンが描けます。これからも明日見世を活用しつつ、さらに商品を多くの人へ広めていきたいです。

和田(明日見世):ありがたいですね。私たちは明日見世を「モノを売るだけの場所」ではないと考えています。三省製薬様でもそうだったように、モノの背景には開発力や歴史といったコト(ストーリー)があるはず。明日見世はこれからも、コトを重視しながらブランドと一緒に“価値が伝わる場”を育てていきたいと考えています。

 また、スキンケアやコスメに限らず食品やサービスなど、業界を問わずお手伝いさせていただきたいので、「百貨店で展開したい」「リアルプロモーションに課題がある」という企業様はぜひ一度お声がけください。一緒に小売の未来を変えていきましょう。

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社 大丸松坂屋百貨店

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/18 12:09 https://markezine.jp/article/detail/49507