単なる味予測ではない。プリングルスが仕掛けた“体験”のストーリー
この事例における主役は、商品ではなく“体験”である。
消費者は、味を推理し、コメントし、SNSで人とつながることで「語る権利」を得る。そして最後に“正解”が発表されることで、参加の物語が完結する。
ブランドは、あえて答えを出さず、答え合わせまでをプロセスとして設計し、「SNSでの会話そのものを商品価値に変換する」ことに成功した。
このような双方向的な商品設計は、もはやプロダクトの開発にとどまらず、コミュニティ体験の創出に近い。

ミステリーがマーケティングになる時代
味覚体験すらソーシャル空間に最適化する必要がある。では、日本企業はこのようなトレンドをどのように応用できるだろうか。
第一に、「味を語らせる仕掛け」をプロダクト設計段階に組み込むこと。すなわち、“正解のない味”を用意し、消費者が「これ何味?」と自然に発信・拡散したくなる余白を残す。あらかじめブランドがすべてを説明しない勇気が求められる。
第二に、TikTokやXなどSNS上の生活者投稿を“研究開発のインスピレーション源”として正式に組み込む体制が必要である。社内マーケティング部門ではなく、R&D・商品企画の人材がトレンド観察を担当することで、プロダクト起点でのSNS反応設計が可能になる。
第三に、ミステリーフレーバーのような“参加体験型”商品を短期SKUや季節限定として導入する開発スキームを常備しておくこと。これにより、柔軟に企画を実現できる。大量生産前提の体制ではなく、まず“語られる商品”を生む実験ラインを社内に持つことが、今後ますます重要になる。
今、消費者は味を「選ぶ」のではなく「一緒に作り、語る」時代を生きているのかもしれない。