メール許諾率15%向上、F2転換率も改善傾向に
──2024年9月には会員プログラムをリニューアルし、購入だけでなく「行動」も評価するマイル制度を導入されたとのこと。どのような仕組みなのでしょうか?また、その狙いを教えてください。
新しいプログラムでは、購入による「ショッピングマイル」に加え、ビームスに触れる行動でもマイルがたまり、会員ステージが上がる「行動マイル」を導入しました。「行動マイル」とは、アプリのダウンロード、メールマガジンの登録、レビューの投稿、各種イベントへの参加といったアクションに、ビームスから感謝の気持ちとして永久不滅のマイルを付与しています。

※クリックすると拡大します
行動を評価する狙いは、ビームスのミッションやビジョンを会員プログラムに反映し、ブランドの価値を一貫して伝え、お客様との「相思相愛」を実現するためです。顧客戦略は経営戦略の一つであり、会社のミッションやビジョンがプログラムに反映されていなければ、一貫性のある体験は提供できないと考えています。
かねてよりポイント付与などの経済的な対価で、お客様の行動を誘発するアプローチは、当社の理想とする「相思相愛」と方向性が異なると考えていました。そのため、購入という行為だけでなく、ビームスを好きでいてくださるお客様と長くお付き合いすることをゴールだと考えており、ブランドとの接触を通じてロイヤリティが自然に育つ設計にしています。
──リニューアル後に得られた成果をお聞かせください。
各メディアの登録者数が大幅に増加しました。従来は登録者数の増加をポイントバックキャンペーンに依存していましたが、リニューアル後はキャンペーンなしでも伸び続けています。
具体的には、新規会員のメール許諾率はリニューアル前の40%から55%に向上しました。1to1でコミュニケーションが取れるお客様が増えたことで、F2転換率(新規顧客のうち、2回目の購入をした割合)も改善しつつあります。
CRMの施策で重要視しているポイントと指標は?
──CRMの施策で最も重要視しているポイントは何でしょうか。
CRMは継続的なコストが掛かるため、ROIを重視する必要があります。しかし、ROIだけを追うと、お客様に対して「買ってください」というメッセージが強くなりがちです。当社では、そうした企業都合のコミュニケーションをやめようとしています。
当然、成果とのバランスは必要ですが、私たちが提供したい価値をお客様に伝えるには「売れなくてもいいから、もっとビームスを好きになってもらいたい」という考えが重要なのです。
──CRMの施策はどのような指標を設定していますか。
KGIは「LTV」と「クロスユーザー」の二つです。LTVは、お客様の状態を測る指標として設定しています。クロスユーザーは、チャネルを横断して購入するお客様を指しています。
私たちが提供する3つのメディア(アプリ、LINE、メール)をすべて保有してくださっているお客様は、この2指標が非常に高い傾向にあります。このことからも、私たちが発信する情報に触れていただけるお客様が、とても大切だとわかっています。
──CRM施策での失敗事例はありますか。
データ活用の難しさを痛感した出来事があります。ビームスのメンズレーベル「BEAMS PLUS」に興味のある方や購入した方に対して、リッチなメールマガジンを月に1回配信しています。
通常、メールマガジンの施策をすると「メールが不要だから外してほしい」というお問い合わせが多いと思うのですが、ある日「いつも楽しみにしていたBEAMS PLUSのメールが届かなくなった」とご連絡をいただきました。
そのお客様の情報を調べてみると、システムで配信対象から自動的に除外されてしまっていたのです。このことから、データだけに頼るのではなく、お客様一人ひとりの背景やレーベルに対する愛着も考慮してCRMを運用していく重要性を再認識しました。