顧客の“インサイト”を求めて、多角的な定性アンケートの開始
顧客インサイトの探求に向け、飯塚氏がまず着手したのが、これまでのCRMでは取得してこなかった「定性データ」の収集だ。アンケート調査によって、顧客の多角的な人物像を浮かび上がらせることを試みた。

まず初めに、顧客のカスタマージャーニーに沿う形で、現在の顧客とブランドのリレーションを深堀するアンケートを設計。これらの定性データと、既存の購買データなどの定量データやNPSなどを掛け合わせることで、顧客像は徐々に解像度を増していった。しかし、ここで新たな課題が生まれた。
分析結果が伝わらない、データ活用の次なる課題
飯塚氏は、収集した膨大なデータを組み合わせ、「キードライバー分析」や「ギャップ分析」といった高度な分析ダッシュボードを構築、回帰分析等も活用し、NPSのスコアを上げることでの売上効果の可視化を実施。全社でデータを共有し、顧客理解を深めようとした。しかし、その複雑さゆえに「他のメンバーは理解できない」というフィードバックを受けたという。
ファッションビジネスは、根幹に感性や直感が求められる領域だ。緻密なグラフや数字の羅列は、マーケターにとっては示唆に富むものであっても、デザイナーやMD担当者には直感的な理解が難しい場合もある。データが豊富になるほど、解釈と共有の難易度は上がっていく。この壁に直面した時の心境を、飯塚氏はこう語る。
「この時、率直に『失敗した』と感じました。数値とグラフだけでは、このデータの価値は社内に伝わらない。それならば、この複雑なデータに“顔”を与え、誰もが直感的に理解できる形にできないか。そこで『AIを使ってペルソナを可視化しよう』と決意したのです」(飯塚氏)


