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注目マーケティングトピックス2025

AIによってコンテンツ制作が民主化される時代が到来──アドビに聞く、リスクとメリットとの向き合い方

強まるコンテンツの内製化傾向。自社でデータを蓄積する時代へ

MZ:企業やマーケターはどのような姿勢で、生成AIでのコンテンツ制作に向き合っていけばいいのでしょうか。

阿部:まず大前提として、生成AIというテクノロジーは「受け入れざるを得ない」ものという認識を持つことが必要です。避けて通ることはもはや不可能といえます。

 次に重要なのは、AIとデータを活用したパーソナライズ体験に真摯に向き合うことです。消費者は、もはや一律のマスマーケティングには反応しません。検索や比較検討のプロセスを経て、自分に最も適した情報を選び取るようになっています。そのため、企業はジャーニー全体を見直し、適切なデータをもとに最適化されたコンテンツを届けていく必要があるでしょう。

MZ:AIに対する「攻め」の姿勢が求められる一方で、ブランド毀損などのリスクについてはどのような対策が考えられますか。

阿部:当社はテクノロジーベンダーのできる対策として、システムでブランド毀損リスクを防ぐ仕組みを開発し、各社へご提案している状況です。しかし、システムによる判別が100%正しいとは言えません。

 システム頼みになりすぎず、社内でAI活用を推進していくための組織体制を構築し、何段階もの構えでリスクヘッジしていくべきだと考えています。

MZ:今後、企業の生成AIを使ったコンテンツ制作は内製が前提となっていくのでしょうか。

阿部:すべてではないものの、ある程度社内で責任を負ってコンテンツを届けていく必要があると思います。実際に企業から「内製化していきたい」という意向はよく聞きますね。

 スピード面でも、生成AIによって自社でPDCAを回せるようになった今、「代理店にバナー制作を頼んで1週間待つ」というペースでは間に合わなくなってきています。特に、SNSなどPDCAを高速で回す必要のある領域においては、自分たちで運用改善をしていく中で、良質なデータや知見を貯めていくニーズが高まっています。

AIエージェント時代に向けて企業が準備すべきことは?

MZ:コンテンツ制作から分析までAIで実現できるようになると、クリエイティブ部門や代理店の役割はどのように変化するのでしょうか。

阿部:まず、企業のクリエイティブ部門は制作のみならず、無数のジャーニーやブランドルールを踏まえ、戦略的にマネタイズを推進する組織へと変化していく必要があるでしょう。AIによって何百通りものコンテンツが作れるようになったからこそ、全体を俯瞰し設計する役割が不可欠です。

 特に、複数のブランドを持っている企業は横断的に統括するPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を置くことが望ましいです。役割分担として、PMOの部分は代理店が担ってもいいと考えています。

MZ:では、各ブランド単位でのマーケターは、何をどこまですればいいのでしょう。

阿部:今まで通り、「ブランドを作って育てる」というミッションの根幹は変わらないと思います。ただ、これからは生活者との接触頻度や速度が変わることによって、ブランド自体が短いスパンで動的に形を変えていきます。ブランディング担当はスケールや時間軸を見直す必要があるかもしれません。

 また、より現場に近いキャンペーンマーケターは、生活者に提供する体験を動的にコーディネートする「オーケストレーター」へと変化していくべきです。キャンペーンマーケターはいわば、一番お客様に近い存在。施策を打てばすぐにデータが入ってきて、判断できる状況にありますよね。結果をもとに、AIでビジュアルや体験設計のバリエーションを即座に増やし、アジャイルにテストしていく役割が求められるのではないでしょうか。

 AI時代におけるコミュニケーションの正解はまだありません。だからこそ、各企業・各現場が自分たちで様々な打ち手を模索し、答えを見つけていく必要があると考えます。

MZ:マネージャーやCMOなど、上位レイヤーの役割についても教えてください。

阿部:上位層がまず着手すべきは、「プロセスの透明化」です。AI活用で組織の業務最適化を図るなら、チーム内の誰が何をやっていて、どういうプロセスで回っているのか、すべて棚卸しする必要があるでしょう。チーム内はもちろん、部門横断でプロセスが透明化されていないと、AI活用はスケールしていきません。

MZ:各部門で閉じるのではなく、全社的に連携していく必要があるのですね。

阿部:なぜなら近い将来「エージェント時代」が到来するからです。エージェント時代は、AI同士が協力しながらタスクを遂行していくようになります。その時、AIにとっては人間が作った部門のくくりなどは関係ありませんよね。

 エージェント活用の効果を最大化したいなら、部門を超えて自由にデータを参照し、推論・アウトプットができる環境を前もって整えておくべきです。エージェントにとって動きやすい環境はきっと、人間にとっても風通しの良い環境であるはずです。

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言語化しにくい「ブランドらしさ」をAIに伝えるには

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/10/16 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49628

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