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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Autumn

田中洋が紐解く、ビジネス成功のキーファクター

圧倒的成長を生み出すGoogleの4つのルール バイスプレジデント岩村水樹氏が語るマネジメント術

Googleのマーケティングの大原則「Know User & Connect to」

田中:最後に岩村さんのマーケティングマネジメント術を教えてください。マーケティングマネジメントとは、突き詰めて言うとやはり人を動かすことだと思うのですが、いかがでしょうか。

 岩村:そうですね。第一に、「Know  the User, Know the Magic & Connect the Two(ユーザーを理解し、製品のマジックを理解し、2つをつなげる)」になるのではないかと思います。大事なのは、ユーザーを深く理解すること、製品やテクノロジーをよく理解し、製品をユーザーにとって価値あるものとすることで、ユーザーとブランドとの継続的な関係を構築すること。ユーザーフォーカスにもつながりますが、ユーザーの理解は何よりも重要です。

 第二の重要な点は、マーケティングをビジネスの成長ドライバーと位置付けることです。Googleのマーケティングでは、明確にインパクトを出すことを徹底しています。インパクトが出なかった場合はその原因を検証する。きちんと学んで、次につなげるという基本が大切です。

 あとは、新しいものをどんどん取り入れることでしょうか。たとえば、昔から言われているマーケティングファネルがありますが、人々の購買行動は、もはやその枠組みでは捉えきれなくなっています。現に、オンラインでの情報収集行動も、いわゆる検索だけでなく、サーチ(Search)、動画などを見るストリーミング(Streaming)、SNSのスクロール(Scroling)をダイナミックに行き来して行われていますよね。それに合わせて、SNSの画面を直接指でなぞるだけで検索できる「囲って検索」や、気になるアイテムを紹介している動画のスクショから「レンズ検索」が出てくるなど、検索自体も多様な方法でできるようになっています。

 こうした様々な情報行動の中で「アハモーメント(わかった!と思う瞬間)」が生まれ、購買行動などに繋がっていくCMOとしての私の役割は、こうした変化の兆しを誰よりも早く捉え、その本質を理解し、マーケティングという形で企業の成長につなげていくことです。

 一方、先ほども申し上げた通り、AIでマーケティングのアプローチが大きく変わってきています。AIというテクノロジーの進化を、単なる効率化ではなく、クリエイティビティをアンロックすることにつなげていけたらと思います。いま、クリエイターやマーケターの方々向けにGeminiを活用したワークショップ「Gemini Day」を開催していますが、皆さんがGeminiでこれまで見たこともない、ものすごくイマジナティブな映像を作ってくれたりすると、本当にワクワクします。

 新しいものが生み出される可能性を信じて、変化をどうやって取り込んでいけるか――マーケターに求められるのは、やはり変わり続けることなのではないでしょうか。

 もちろんAI時代でも、マーケティングの根幹は変わらないとも思います。生活者のことを理解し、より良いものを提供することによって、社会の進歩や成長を促すことは変わりません。しかし、そのやり方は大きく変わっていきますし、これまで以上に新しい可能性が広がっています。

 変化を恐れるのではなく、AIというパワフルなツールをどう使いこなし、生活者にとって本当に価値のある出会いを生み出していくか。そのクリエイティブな挑戦こそが、これからのマーケターの醍醐味だと思います。皆さんと一緒に、AIが可能にする新しいマーケティングの未来を切り開いていけたらと願っています。

田中:まだまだお聞きしたこといっぱいあるのですが、とてもエキサイティングなお話をありがとうございました。

※GAFAMの各社の創業年から最新年(2024年)までの決算発表に基づいた平均CGR比較(Geminiによる)について

*Alphabet (Google):約19.6%
*Microsoft:約14.4%
*Amazon:約13.3%
*Meta(Facebook):約40.0%
*Apple:約9.2%

※各社の創業初期の売上高データは非常に小さく、CGRが異常に高く算出される可能性があるため、多くの企業ではIPO後や一定の規模に達した後のデータからCGRを算出することが一般的。今回は提供された情報に基づいて、データが利用可能な最も初期の年を「起点年」としてCGRを計算。

田中先生のあとがき

 今回の対談で、私が理解したかったこととは、あらためてGoogleとはどのような企業なのか、ということだった。それを理解するために、今回の対談では、AIと組織文化が話題ととなった。

 Googleが現在精力的に取り組んでいるエリアのひとつの中心は言うまでもなくAIにある。Googleはこの数年間に取り組んでいるだけでなく、すでに10年以上前からAIファーストで取り組んできたのである。

 「Gemini」を中心に、検索・ワークスペース・Android・クラウドへ統合を図っており、その特徴はマルチモーダル(言語・音声・画像・動画)対応と、Googleの既存資源との有機的結合にある。こうしたアプローチは、マーケティングにおいてもリサーチ・アイデア創出・制作・トラッキングの高速化と品質向上を実現しつつある。

 対談のもうひとつのフォーカスはGoogleの組織文化である。イノベーションを生む組織文化とはどのようなものなのか。Googleはミッションとして「世界中の情報を整理し、誰でもアクセスできるようにする」を持ち、それを実現するための行動規範として「Do the Right Thing」を掲げている。また組織のルールとして、Think 10X(10倍発想)を掲げ、10%でなく、10倍の成果を生む発想を奨励している。

 またよく知られているように、パフォーマンスの高いチームには「心理的安全性」があることを研究の成果として導き、これを実践している。さらには、20%ルール、OKR(目標と成果指標)でリスクテイクと創造性を促進している。

 このようなGoogleの戦略、組織文化にわたって我々が得られることは大きい。そこにあるのはそれまでのやり方や成果に満足せず、さらに上位の目標を目指すよう組織メンバーを励まし、促すための仕組みが組織に組み込まれている点である。またそのために、何が必要な施策かを自分自身に常に問いかけ続けている。その企業姿勢にも我々が学ぶところは大きい。

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この記事の著者

田中 洋(タナカ ヒロシ)

中央大学名誉教授。東京大学経済学部講師。京都大学博士(経済学)。マーケティング論専攻。電通で21年実務を経験したのち、法政大学経営学部教授、コロンビア大学客員研究員、中央大学大学院ビジネススクール教授などを経て現職。日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。『ブランド戦略論』(2017年、有斐閣...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/10/01 08:30 https://markezine.jp/article/detail/49644

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